研究課題/領域番号 |
19K01627
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
伊藤 高弘 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (20547054)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環境保全型農業 / 有機農業認証 / 農業技術普及 / 情報伝播 / 村落内ネットワーク / 無作為化比較対照試験 / スリランカ |
研究実績の概要 |
本研究は以下の研究テーマからなる。 A)環境保全型農業技術および有機農業認証への政府補助金プログラムに関する、村落内の知識・情報の共有メカニズムの解明 B)フィールド実験の手法を用いた、農家による環境保全型の農業技術採用の要因解明 C)環境保全型農業技術の採用による農業生産性への影響評価 2年度目であるR2年度の進捗は以下の通りである。まず、テーマAに関して、スリランカ中部州3県5村にて行った、政府補助金プログラムに関する無作為化比較試験(RCT)・家計調査から得られたデータを用いた論文が完成した。具体的には、農業認証に関するリーフレットを非参加者に配布する役割を、無作為に選ばれた研修会参加者に依頼した実験を用いている。非参加者の、リーフレットの受領、農業認証に関する知識の増加、実際の農業認証申請への参加の三つをアウトカムとし、それらがどのような要因で促進されるかを、ネットワーク・モデルを用いて分析している。分析結果は、村の農業リーダーが研修会参加者に選ばれている場合、直接彼とつながっている非参加者の知識と認証申請への参加率が上がることが示され、他の参加者からのネットワークを通じた影響は、リーフレットの所有のみで存在することが示された。この論文の主要な貢献点は、ネットワーク・モデルの分析において、リフレクション問題と呼ばれる推計上の困難を、無作為化比較試験(RCT)のデザインを工夫することで対処している点である。当該分野においてRCTの手法を用いてこの問題に対処した研究は、本論文がおける初めてであると思われる。 テーマB・Cについては、アヌラーダプラ県の1,400世帯(40村35世帯)に対して、一昨年実施したRCTの結果を得るべく、昨年度末に技術採用の有無・コメの生産量の調査を行っていた。現在、この調査から得られたデータのデジタル化およびクリーニングが完了し、分析に取り掛かっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記「研究実績の概要」で述べた、テーマB・Cの調査自体は、現地の調査員によって無事に完了していたが、スリランカにおいても新型コロナウィルスが蔓延し、外出禁止令などの措置が取られた影響で、調査員が集めた紙媒体のデータの大部分を研究補助者が受け取るのが大幅に遅れてしまった。また研究補助者自身も、日本に帰国する時期が大きく遅れたこともあり、最終的なデータセットの完成は当初の予定よりも半年以上遅れることとなった。このため、研究計画は予定よりもやや遅れていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
3年目であるR3年度は、テーマAの論文を国際誌に投稿し、掲載を目指す。テーマB・Cについては、分析を完成させ次第、論文としてまとめる。学術学会などにおいて研究報告を行った後、加筆・修正が間に合えば、国際学術誌に投稿をしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記「研究実績の概要」で述べた、テーマB・Cの論文がまだ完成しておらず、英文校正の費用を次年度に残したこと、また現地訪問を行う予定が新型コロナ蔓延の影響により延期となったことが主な理由である。英文校正と研究に必要な備品への支出に当てる予定である。
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