研究課題/領域番号 |
19K01628
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
陳 光輝 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (00188509)
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研究分担者 |
橋口 善浩 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター 経済モデル研究グループ, 研究員 (40432554)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 集積 / 生産性 / 競争力 / 参入 / 退出 |
研究実績の概要 |
本研究は中国とインドネシアの企業・事業所データを利用して,集積地と非集積地企業の生産性と価格競争力を比較・分析し,集積の生産性効果といわれてきたものは何であったのか,集積はどのような企業を成長させ,どのような企業を淘汰してきたのかを明らかにするものである。本年度,主な実績は以下である。 1. 1998~2003年の中国工業企業統計ミクロデータを用いて企業レベルの物的生産性と収入生産性(revenue productivity)を推定し,160の製造業産業ごとに約2900の県レベル地域を立地確率の大きさによって集積地・非集積地に二分して生産性の水準や参入・退出率を比較した。この分析によれば,集積地企業は物的生産性も収入生産性も高い傾向があり,集積地では小規模低生産性企業の参入が相対的に多いようにも見受けられたが,参入・退出そのものが活発とは認められなかった。 2. 2003~2007年の同じデータを使って国有企業の低生産性と価格競争力に関する分析を行った。 a) 国有企業の低生産性は資源誤配分をもたらしており,民有セクターにリソースが移動している産業ほど,所有セクター間の配分効率性が改善していることを明らかにした。 b) 製造業企業の平均マークアップは増加傾向にあり,国有企業の平均マークアップは民間企業・外資企業にキャッチアップしていること,ただしキャッチアップは存続企業のマークアップ率上昇でなく,低マークアップ企業の退出がドライブしていたことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中国については初歩的な分析がほぼ終了し,今後どのように進めていけばいいかを見通すことができた。 インドネシアについてはやや遅れているが,基本データの収集は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 当初計画に従って1998~2003年中国のデータを分析する。今年度の初歩的分析の結果が集積地と非集積地の分け方によってどれだけ変わるか,産業によってどれだけ変わるかなどを詳細に検討し、集積の生産性効果とされてきたのは物的生産性の引き上げなのか価格競争力の引き上げなのか,どのような企業が参入し,どのような企業が退出したのかを明らかにする。 2. 企業ごとの価格情報が得られない2004年以降の中国とインドネシアについて今年度行ったような企業ごとのマークアップ率の推定を行い,集積地・非集積地の収入生産性,マークアップ率や参入・退出率を比較することによって,集積の企業・産業育成効果を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2013年中国工業企業データベースの購入を予定していたが,中国政府の方針でベンダーを通じた入手が困難になった。現在対応策を検討中である。
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