日本の出生率の低下の要因を育児休業制度の非効率性にあるのではないかと考え、本年度は、まず、育児休業制度に関する理論研究を"A theory of optimal paid parental leave policiesとしてまとめた。 本論文では、労働者が育児休業が明けても職場復帰する義務がないという点を考慮し、労働者が育児休業制度を利用した上で、社会厚生を最大化する制度の特徴化を行った。本研究は本研究プロジェクトの初年度からモデルを構築し分析したものであり、研究期間全体を通じて研究報告などを行った。その際にいただいたコメント等を反映して改訂を続けており、まだまだ不十分な点も見られるため、今後も引き続き研究を続けていく予定である。次に、賦課方式の年金制度と教育への補助金を考慮した出生と老年時の労働供給を内生化した成長理論モデルを研究し、論文(タイトル"Pay-as-you-go social security and educational subsidy in an overlapping generations model with endogenous fertility and endogenous retirement")としてまとめ、専門学術誌であるThe B.E. Journal of Macroeconomicsに採択された。本論文では、出生行動を内生化した内生的成長モデルを考え、公的年金制度と教育への補助金がどう個人の出生行動に影響するかを検討している。老年時の労働供給を個人が決めることができるかどうかが税率が出生率へ影響を与えるかどうかに重要であることが示され、モデルの設定の重要性が示された。本研究は本研究プロジェクトの2年目から開始した共同研究であり、最終的に国際学術誌への掲載が決まり、本研究プロジェクトの重要な成果の一つとなった。
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