研究課題/領域番号 |
19K01632
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
内田 真輔 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (70636224)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 異常気温 / 回避行動 / 電力価格 / 死亡率 / トレード・オフ |
研究実績の概要 |
本研究では、異常気象が人々の健康におよぼす影響を定量的に明らかにするために、下記の3項目を2019年度中から現在にかけて順次実施している。 (1) データベースの構築:定量分析に必要となる政令指定都市別の時系列データとして、「死亡データ(厚生労働省の人口動態調査)」、「気候データ(気象庁)」、「エネルギー価格データ(総務省小売物価統計調査)」をそれぞれ入手し、分析用のデータベースを構築した。 (2) 回避行動モデルの構築:異常気象に対する回避行動をモデル化するにあたり、エネルギー価格変化に対する人々の回避行動(エアコン使用などのリスク回避行動)の変化を計量モデルに組み込んだ。 (3) 計量分析:構築したデータベースと回避行動モデルを用いて猛暑や寒波などの影響を推定し、結果を吟味した。 推定結果から、まず近年の日本においては、5度以下の非常に低い気温下にある日数の増加が死亡率を顕著に上昇させることを確認した。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のBarreca教授らによるアメリカの最新研究においても、近年の死亡率を有意に引き上げているのは低温であり、高温の影響は昔ほど顕著でなくなったことが示されている。死亡率の上昇はとくに高齢者に多くみられ、心筋梗塞や心不全などの循環器系疾患が主な死因であった。また、0度以下の環境下では、電力価格の上昇に伴って死亡リスクがよりいっそう引き上げられることも判明した。暖房器具などにかかる電気代が冷房代に比べて殊更高いこと(0度から20度へ温めるには35度から25度へ冷やす以上のエネルギーが必要)や厚着・毛布などで寒さをしのぐ手立てがあることが、寒さに対する我慢を助長したのではないかと推測される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの収集・整備、モデルの構築・分析について、ほぼ予定通りに進めることができており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現状の分析を拡張するために、現在、追加データの申請作業中である。データを入手次第、できる限り速やかにデータベースを整備し、分析をとり行うことを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の予算は、前倒し支払請求分を含めて、おおむね計画通りに使用した。誤差の範囲で生じた残額については、次年度に繰り越し、追加データの購入費などに充てることとする。
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