研究課題/領域番号 |
19K01632
|
研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
内田 真輔 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (70636224)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 異常気温 / 回避行動 / 電力価格 / 死亡率 / 災害 |
研究実績の概要 |
本研究では、異常気象や自然災害が人々の健康におよぼす影響を定量的に明らかにするために、3項目:(1)データベースの構築、(2)分析モデルの構築、(3)計量分析、を2019年度中から現在にかけて順次実施している。2021年度は下記の通り、(※)2020年度までの成果の更新・編集作業を行いつつ、(3)新規データを用いた追加的な計量分析を2020年度に引き続き行った。 (※) 2020年度までの成果の更新・編集作業:これまでの研究成果をまとめた論文を当該分野の一流誌に掲載した。また、本研究に関連した研究展望論文と記事を国内査読誌と経済学関連雑誌にそれぞれ掲載した。2020年度に収集した新規データを用いた予備分析結果についても、オンラインの国際学会や研究会などで発表しながら、分析を進めている。 (3) 計量分析:2020年度に収集した市町村パネルデータ(65歳以上の死亡者数、介護保険認定者数、住民移動者数など)を用いて、大規模自然災害(東日本大震災)への被災状況が及ぼす健康影響に関する予備的分析を引き続き行った。昨年度の分析結果より、東日本大震災の被災地域における死亡率と要介護認定率は、それ以外の地域に比べて顕著にかつ長期的に(7年後においても)上昇したことが分かった。加えて、今年度の分析結果より、これらの影響は65-75歳の比較的若い高齢者層よりも75歳以上の高齢者層に強く表れることが観察された。また、これらの影響は被災地域の中でも大きく異なることが分かった。特に、津波の被害を直接受けた自治体や人口規模の小さな被災自治体、震災以前より要介護認定者割合の高かった被災自治体において、要介護認定者数のより顕著な増加傾向が認められた。これらの結果より、被災に伴う健康格差が、被災地内外だけでなく被災地間でも拡大し続けていることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの収集・整備、モデルの構築・分析については、おおむね順調に進展していると考えられる。研究成果をまとめた論文を当該分野の一流誌に掲載することができ、そこから波及した成果物2点も国内査読誌と経済学関連雑誌に掲載できた。他方、昨年度から続くコロナ禍の影響で国内外の学会への参加にはいまだ制約が多く、対面での密な研究交流ができない状態にある。そのような中で、海外共同研究者との研究体制については再調整を行うことができ、2022年度中に対面での交流機会を一定程度確保できる見通しがついたので、この機会をなんとか実現したい。
|
今後の研究の推進方策 |
現状の分析を拡張するために必要な追加データを引き続き収集する。また、2022年度中に共同研究者との対面交流を実現させることで、現在の研究課題について集中的に意見交換を行いつつ、共同研究を今後さらに発展させるための基盤作りにつなげることも念頭に置く。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き、コロナ禍に伴う国内外移動の自粛・渡航禁止により、本年度に計上していたこれらに係る旅費等の諸経費に未使用額が生じた。これらを次年度へ繰り越すこととする。
|