研究課題/領域番号 |
19K01633
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
白石 麻保 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (40425004)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中国 / 企業 / 企業金融 |
研究実績の概要 |
本研究では、中国でいわゆるゾンビ企業、すなわち市場から淘汰されるべき競争力が低い企業が何らかの背景のもとに市場に残存している実態の有無及びその背景を実証的に解明することにある。まず、今年度はゾンビ企業の存在の有無について分析をおこなった。 その結果、第1に国有企業においては、2007年のリーマンショックに端を発する世界金融危機後、銀行からの融資が効率性の低い企業にも行われることにより、本来であれば淘汰されるべき企業が市場に残り続けている、いわばゾンビ企業の実態が実証的に明らかになったこと、そしてその傾向は2008年以降にそれ以前よりも統計的に有意にみられるようになったこと、第2に先行研究ではあまり指摘されない民営企業においては、これまで銀行融資のような正規金融チャネルへのアクセスの難しさを補完する形で有効に機能していた企業間信用が、効率性の低い民営企業に対しては、その市場からの淘汰を回避するものとなっており、企業の市場からの退出という最終局面では救済的色彩が濃いことが分かった。第3に但し国有企業における銀行融資の市場淘汰に対する救済的役割は短期融資にとどまっていることから、金融機関が長期融資というよりリスクの高い融資についてまで、企業を救済するために貸し付けを続けている、あるいは返済を待つ、ということは見られないことが明らかとなった。 以上より、アネクドータルに指摘されていた中国ゾンビ企業の存在が実証的に明らかにされ、且つ、そのイメージも描けつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の初年度において、フィールドワークと実証分析を通じて、民営ゾンビ企業の存在が示唆される結果を得ることができた。そしてその要因、背景についても分析の中でアイディアを得ることができ、今後の研究計画の進展につなげることが可能となっている。以上の理由により、本研究課題遂行の状況を上記の進捗状況と評した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の分析を受けて競争力が低い、業績が良好でない企業の市場への残存がみられる実態を踏まえて、企業による市場における持続的生存のための戦略に政府とのポリティカルコネクションへのアクセスとその維持が入っているのか、またその影響の大きさについて検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたフィールドワークを今般のCOVID-19感染問題により中止したことによる。フィールドワーク、国際学会への参加について本科研費より執行を予定している今後の使用計画も、COVID-19の感染問題の状況、それを踏まえた関係部署の方針・対応に基づき可能な限り本研究課題遂行を行い、成果を出すことを目指す。
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