研究課題/領域番号 |
19K01643
|
研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
蟹 雅代 帝塚山大学, 経済経営学部, 准教授 (20509187)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 研究開発 / 調整費用 / イノベーション戦略 |
研究実績の概要 |
過去の金融危機や経済低迷において企業の研究開発費は大きく減少することが観察され、また先行研究でも調整費用の高い研究開発投資は設備投資や雇用と比べて長期的不確実性に対して敏感に反応することが示されている。一方で、企業戦略の違いによって研究開発費の内訳は異なるので、研究開発投資の調整過程は企業戦略の違いを反映すると考えられる。本研究課題では、「企業はいかに研究開発投資の調整を行うのか」という問いについて、資金調達、企業属性、研究開発集約度の影響の観点から実証的検証を進めてきた。日本の製造業企業の財務データから分析用データセットを作成し、研究開発投資モデルの推定を行った。まず結果として、研究開発投資は高い調整費用によって「状態依存が強い」、すなわち「R&D平準化(R&D smoothing)」が観察される。そして、その調整行動に企業異質性の存在が予想されることから、研究開発投資の状態依存性について、業種や規模といった企業属性別の分析を行うとともに、研究開発投資の分布を考慮した分析を行った。 以上の分析の意義について、イノベーション政策との関連から考察すると、研究開発投資が高い調整費用によって強い状態依存性を持つことは、政策による研究開発促進の効果に影響する可能性がある。Agrawal et al. (2014) は、カナダの研究開発税制の変更を利用して、税額控除が中小企業の研究開発に与える影響を分析し、人件費より研究開発委託費で効果が大きいことを示している。本研究課題は、研究開発費の項目を分析したものではないものの、調整過程の異質性を踏まえて、政策的含意を提示する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画の下、文献レビュー、分析モデルの検討、データセットの作成、推定を実施した。論文執筆・公表の計画においてやや遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在改訂中の論文、また執筆中の論文も含めて、今後発表する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の遅れによって次年度使用額が生じている。部分的には今後解消する予定である。
|