研究実績の概要 |
今年度は、以前に執筆した論文の改訂を行いつつ、金融ショックの国際波及チャネルとして国際貿易と国際的金融取引を同時に考慮した研究に着手した。 前年度、銀行の金融仲介機能への負のショックがR&D投資へ波及して景気後退が長引く閉鎖経済モデルを構築し,その結果を"Financial shocks to banks, R&D investment, and recessions"という論文としてまとめた。今年度、この研究で用いたモデルを2国モデルに拡張し、金融市場の統合度合いと経済の景気の安定性についての研究に着手した。 このモデルでは、両国は中間財貿易を行っており、また各国の中間財企業の株式は、その国の家計と、その国の銀行、さらに他国の銀行によって保有される。ここで、最後の国際的な株式保有について摩擦(frictions)を導入する。この摩擦がないとき、2国の金融市場は完全に統合されており、逆に摩擦が十分大きければ2国は財の貿易だけを行っていることになる(financial autarkyの状態)。分析の結果、この国債金融取引に関する摩擦が十分小さいときや十分大きいときは経済に単一の均衡のみが存在するのに対し、摩擦が中程度のときには経済に高成長、低成長の2つの均衡が生じることを示した。 途中までの研究成果を、"A model of global recessions caused by imperfect globalization"と題してまとめ、11月20-21日にかけて東京工業大学で開催した「マクロ経済動学の理論・数量分析」で報告した。現在、この研究について、数値計算を含む追加の分析を実行中である。
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