研究課題/領域番号 |
19K01655
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
木村 雄一 大分大学, 経済学部, 准教授 (80419275)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 土地所有制度 / 信用アクセス / 土地利用・労働移動 / 所得分配 / 政治参加 |
研究実績の概要 |
本計画は現地調査によるデータ収集、それに基づく計量経済学的な分析に依存する。当初から計画期間を2019年から2021年の3年間に設定していたが、調査を実施できないまま最終年度まで経過、2022年度に延長、2023年度に再延長した。2022年度終了時点で予備調査も本調査も実行できていない。したがって当然データはなく、その分析結果もない。つまり「研究実績の概要」に相当する内容は全く作り出し得ていない。 中国のコロナ感染状況と国の感染防止政策の方向に注視してきており、2022年度開始前の希望的観測としては、2022年夏までに予備調査、2022年度後期末の春に本調査をできることを念頭に置いていた。実際は、2022年夏には感染状況・中国政府の入国方針により入国不可、さらに 2023年2月には国家主席3期目就任が関係した党大会の直後であり、コロナ収束直前であったが感染対策のデモ騒動が重なり、国内が政治的に緊迫した状況になった。さらに国際関係の緊迫が重なり、年明けから日本人のみならず、一時、中国人でも日本からの入国が困難になった。 2022年度中には、渡航可能になった場合に備え、質問票の準備だけは進めた。これ以外では、ビザ取得、そのための招聘状取得の可能性に向けて各方面にアプローチしたのみであった。引き続き、渡航情報に注視するとともに、招聘状・ビザ取得に向け、大分市と武漢大学を通じる経路と、修士課程学生(2023年9月に終了予定)と山東省社会科学院を通じる経路でアプローチする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
筆者はこの年度の春季休業中の2023年度2月に中国国内にある調査予定地への渡航を目指してビザの取得の可能性を探った。結果は芳しくなく、ついに渡航する事はできなかった。渡航のための努力過程、および事情は下の通りである。 2022年度を通じて、引き続き、コロナウィルス蔓延の影響から、また中国と日本の外交関係から、日本人の中国渡航は厳しい状況にあった。ビザ取得には、この年から、中国国内の事業所または機関からの招聘状を必要とする制度の厳格化があった。この招聘状の取得が最も困難であり、 3通りの方法で取得の努力をした。まず、大分市のJICA事務局を通じてJICA北京事務所、さらに調査予定地である山東省と寧夏省へ発行依頼してもらう方法、次に、大分市と姉妹都市協定を結んでいる武漢大学に、大分市の国際部を通じて発行依頼してもらう方法、最後に、筆者が担当する修士課程学生の親戚で山東省、社会科学院に勤務する研究員の方を通じて、山東省社会科学院発行を依頼する方法であった。 結果はいずれの経路でも招聘状発行に至らなかった。困難は中国国内の諸事情による。これらの方法を模索した2022年10月から2023年1月にかけては、国家主席3期目就任を決定する党大会の前後であったことにより、国内のあらゆる機関が政治的に慎重な態度であったこと、引き続きパンデミックが収まっていなかったこと、日中関係に困難が生じていることなどである。2022年年末から年明けにかけて、日本人は完全な入国停止措置がとられたし、上述の中国人、大学院生さえ、入国が不可能であった。その後、中国人については入国可能になったが、山東省、社会科学院研究員の親戚の情報によれば、中国人であっても、農村まで調査に入る事は禁止的に困難であるとの情報を得、中国人大学院生さえも自身での渡航を断念したという経緯であった。
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今後の研究の推進方策 |
本計画の寧夏省プロジェクトは、それらの社会実験のうち最新のものではあるが、上記の諸研究の結果から実証的に既にかなりのコンセンサスが得られていて、追加的な社会実験も結果は予測の範囲を出ない可能性が高いと思われる。このような意味で、本計画の主要な問題設定について、結論がある程度自明である、あるいは、問題設定の幅が小さいように思われることについて不満がないわけではない。新しい貢献を加える余地があるとすれば、土地市場・信用市場・労働市場での取引拡充へのインパクトと別に、所得分配へのインパクトが考えられなくもない。この点は比較的研究が少ないことは確実であるので、経済活動促進の所得階層別などの差異に着目して詳細に明らかにすることは一定の意義があると言えるだろう。調査が可能になった時点で注力するべき論点のひとつである。 調査開始できないでいる間、調査票の作成のみ進めた。ここで、調査時点で、調査地に居住していない家計についての情報を得る方法が必要となる。土地制度の予測される効果として、土地の(請負権・経営権)貸し出し・売却と移住が焦点となり、移動後の経済的選択・所得などを観察する要請があるからだ。本来では長期間のインターバルを開けた2時点以上の調査でなければ得られない。回顧データの方法を使っても、通常は調査時点で居住している家計についての過去情報しか得られず、移動してしまったものについては補足できない。この問題について、親族ベースのサンプリングによる情報取得方法を考案した。サンプリングの第一段階を家計単位でランダムに行い、そこから親族家計を追う。調査時点で居住していない家計の家族構成、土地取引の詳細、移動先での経済活動や子供の修学などの情報について詳細に聴き取りできることを期待する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算の大部分は、中国寧夏省 石嘴山市でのデータ収集の現地調査に使用される計画であった。特に雇用する6、7人程度調査員の謝金や、必要な場合は宿泊費などである。本調査は、本計画の開始時点の計画で、もともと初年度(2019年度)の冬に予備調査を、2年目(2020年度)の夏に本調査を行う予定であった。しかし3年目(2021年度)、4年目(2022年度)とずれこみ、4年目終了時に至ってまだ、予備調査も本調査も実施できていない。 最初の予備調査予定であった2019年度終盤にちょうどコロナ禍が始まり、3年後の2022年度末の時点で収束に近づいたが、今度は国際情勢も加わり渡航不可能となり、全ての計画が未遂行のままの状態となった。2019年度末から数えると、2022年度末に予備調査に至らなかった時点で3年半の遅延となったが、今後、最短で 2023年度夏に実施できる状況となれば、まず予備調査の旅費と調査費用に使用する予定である。 使用計画は、内容に関してはこれまでの内訳のままで良い。ただし時間軸としては、まず予備調査、次に半年ほどを空けて本調査が望ましいので、希望的観測としては、2023年度の夏までに予備調査、2023年度後期末の春に本調査を行うことができればありがたい。最低でも理想の時間軸がとれない場合は、2023年度の夏に予備調査から本調査へ連続して実行できるための準備を出来る限り整えておきたい。
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