研究課題/領域番号 |
19K01660
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
平田 英明 法政大学, 経営学部, 教授 (60409349)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際マクロ経済学 / 連動性 |
研究実績の概要 |
初年度は以下のような研究実績であった。 1.先行研究のサーベイ:世界金融危機以降の長期停滞の時期を含めた研究が多数登場したこと、世界金融危機のインパクトの大きさ故の影響の処理の仕方などについて、多くの新しい手法を用いた分析が登場した。特に、近年は先進国以上に新興国に関する研究も充実してきているとともに、両者をセットで取り扱う分析も増加している。これらの先行研究をサーベイし、理論モデルや実証モデル構築の基礎とした。 また、本研究が注目する産業レベルの分析がKLEMS統計の充実とともに少しずつ出てきているので、それに関連したサーベイも実施した。ただし、データ更新毎にデータの変化も大きいため、作成方法を含めて精査している。 2.パネルデータセットの整理と記述統計量の計測:データセットは、欠損値についてはかなり減ってきたが、産業分類がデータによって区々なこともあり、丁寧にデータ処理をする必要があった。基礎データを各国ごとに収集し、そこから生産性のデータを計算したり、国境ではなくよりハードルとして低い県境の影響を見てみるための都道府県のデータを集約している。データの整備を進めたが、データが随時更新され、過去のデータが更新されることも多く、整備にはかなりの手間を要する。 3.2月以降、コロナウィルス問題が発生し、本研究との関係性に鑑み、世界の研究動向を調べた。これは次年度も継続して行っていくが、短期的な影響と長期的な影響を見極め、研究成果に反映させていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
年度末の時期に作業を進めようとしたが、コロナ問題が生じ、十分に時間が取れなかったこと、データの問題が多く、手間がかかっていること、データの改訂が想定外に行われたことなどが主な理由である。
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今後の研究の推進方策 |
データの整備にはまだ時間がかかるが、データなくして分析は進められないので、丁寧に作業を進める。 今回のコロナウィルスの問題は様々な伝播や連動という問題に対する社会的な関心を高めていると考えられる。すなわち、国際化が進み物流や人の行き来が従来に比べてもかなり国境を意識せずに行えるようになってきた今日、目に見えないウィルスは国際的にいとも簡単に伝播する。伝播のチャネルは人の移動が基本だと考えられるが、物流に伴うウィルスの移動もあり得るのかもしれない。他方、経済活動に関する連動はもう少し複雑なメカニズムとなる。ウィルスと異なり様々な経済的ショックが与える影響は国の経済構造や伝播チャネルの太細によってかなり異なる故である。 ただ、コロナウィルスに関する上記の議論は、ウィルスの第一次的なショックのみに目を向けた近視眼的なものであり、この供給ショックを通じて、人々の所得が減り、需要が落ち込むといったメカニズムが働く。オイルショックと一見似ているメカニズムではあるものの、産油国と非産油国といったいわば勝ち組と負け組が出てくる状況とは異なり、どの国も一様に負のショックを受けるという点がこれまでのショックと特徴が大きく異なる。更に言えば、医療システムの充実度や政治体制の違いがショックのインパクトに決定的な影響を与える可能性が高い。 当初の研究プランにはなかったが、本研究でこのような影響について考えていくことは必要不可欠と考えている。データの出そろうタイミングも意識しつつ、研究に注力していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度後半以降の社会的な状況変化に伴い、出張等を見合わせざるをえなくなったため。次年度に研究を進めるため、学会出張等のために活用する予定。
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