研究実績の概要 |
本年度は,企業の異質性及び国の非対称性を考慮した経済成長モデルのうち,資本蓄積に基づくNaito (2017, EL)に輸入関税と関税収入を導入し,動学的最適関税を特徴付けた. 論文``Productivity, economic size, and optimal tariff in a Melitz model with capital accumulation''では,ある国の生産性,経済の大きさ,最適関税の関係を調べるため,資本蓄積に基づく内生成長を伴う2国メリッツ・モデルを定式化した.ある国の関税の増加は常に均斉成長率を減少させるが,その関税のゼロからの微小な増加は常にその国の長期的厚生を増加させる.従って,ある国の最適関税はゼロではなく正である.また,ある国の生産性下限の増加はその国の相対GDPを増加させるが,その国が自由貿易化から逸脱することの純便益を減少させる.これは,より大きな国がより低い最適関税をかけることを示唆する.最後の点は,中国と米国から成る2国の世界をカリブレートした経済において確認された.本論文は,下書きを終えた段階なので,来年度以降磨き上げていく. 一方,前年度一応の完成を見た論文``Can the optimal tariff be zero for a growing large country?''は,本年度末にInternational Economic Reviewに採択され,来年度中に出版される予定である. これまでに,研究開発に基づく内生成長モデルでは大国の最適関税がゼロになり得るが,資本蓄積に基づく内生成長モデルでは大国の最適関税がゼロになり得ないことが分かった.
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