本年度は,本研究課題における2本目の論文Naito (2022) ``Does a larger country set a higher optimal tariff with monopolistic competition and capital accumulation?''をEconomics Lettersに出版することができた.本論文では,独占的競争と資本蓄積を伴う2国内生成長モデルにおいて,「ある国の最適関税が正となる」こと,及び「より生産性が高く,従ってより経済的に大きな国が,より低い最適関税をかける」ことを示した. 以上の結果を本研究課題における1本目の論文Naito (2021) ``Can the optimal tariff be zero for a growing large country?''と比べると,本研究課題「大国にとって最適関税はゼロとなり得るか:動学的視点からの再考」への回答が浮かび上がってくる.動学的視点から再考すると,静学的モデルにおける結論とは逆に,大国にとっての最適関税はゼロとなり得る.しかしながら,それが成り立つのは研究開発を成長のエンジンとするNaito (2021)の場合のみであり,資本蓄積を成長のエンジンとするNaito (2022)では成り立たないことが分かった. また,より経済的に大きな国がより低い最適関税をかけるという結果は,Naito (2021)とNaito (2022)に共通して言えるということも分かった.
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