現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を遂行する上で、今年度はアジアの脱工業化と産業構造変化、および中所得国の罠に関する文献・先行研究レビューを行った。まず、Rodrik (2015)は未熟な脱工業化として、多くの途上国が十分に生産性向上を果たす前に脱工業化という産業構造変化を迎えることに注目している。一方で、Gill and Kharas (2015)などは、中所得国が所得水準を上げることができずに低迷しているとして「中所得国の罠」に陥っていることを実証分析で検証を行った。これらの先行研究を通して、アジアにおいても脱工業化の産業構造変化と中所得国の罠の関連性は重要な分析課題であることが想定される。実際に多くのアジア途上国は、これまでの先進工業国の成長プロセスに従って段階的に経済発展してきたが、工業からサービス業へ産業構造の比重が移行する脱工業化の際に必ずしも生産性向上を成し遂げた国ばかりではない。このような経済発展プロセスにおいて未熟な脱工業化がみられるアジア途上国の存在は、今年度の予備的なデータ分析において限定的ながら明らかにすることができた。以上の研究成果を踏まえて、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断している。 (参考文献) Gill, Indermit S., and Homi Kharas (2015), “The middle-income trap turns ten”, World Bank Policy Research Working Paper 7403, Washington, D. C.: World Bank. Rodrik, Dani (2015), “Premature deindustrialization”, School of Social Science Economics Working Papers, Paper Number 107.
|