研究課題/領域番号 |
19K01665
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研究機関 | 関西国際大学 |
研究代表者 |
川脇 康生 関西国際大学, 経営学部, 教授 (80806737)
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研究分担者 |
石田 祐 宮城大学, 事業構想学群, 教授 (20455554)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ソーシャル・キャピタル / レジリエンス / 生活復興 / 東日本大震災 |
研究実績の概要 |
災害多発時代を迎え、人口減少・高齢化の進むわが国では、地域の災害対応力をどのように維持し高めていくか、大きな課題となっている。本研究は現代社会における地域住民同士のつながりがそれほど緊密ではない社会環境を前提としつつも、災害時や非常時には地域のネットワークを活性化できるレジリエンスのあるコミュニティのあり方を考えるものである。 研究1年目の2019年度は、国際ワークショップと東北被災地の現地調査を行い、地域住民間の社会関係資本と生活復興との関係について考察を深めた。とりわけ国際ワークショップでは、ゴトン・ロヨンなど地域住民間の協力関係が習慣化されているインドネシアの事例について現地の研究者から情報を提供してもらうとともに、東北被災地調査では市民による被災者支援活動を調査している地元研究者などから被災地復興の現状と課題について情報を提供してもらった。 研究2年目の2020年度は、これまでの活動で得られた知見をもとに、データを用いた定量分析の結果も加えて研究論文をまとめ、学術雑誌において成果発表を行った。得られた重要な研究成果として、住民間の信頼関係や多様な主体の参画を認めるコミュニティにおいて、災害後、協力活動がより活性化され、復興格差の是正、被災地住民の前向きな復興努力やより明るい将来予測につながることなどを客観データにより示すことができた。 研究3年目の2021年度は、被災地内での協力関係を越えて、国民全体が東北被災地を支える仕組みとして、ボランティア活動や金銭寄付により支援を行うことの意義について考察し学会で発表した。また、遅れていた東北被災地住民の生活復興に関する質問紙調査を実施し、約2500の有効サンプルを得た。震災後3年目と11年目の2時点での生活復興に関するパネルデータを整備することができたので、今後、これを用いて長期的な生活復興の実態を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究は、災害対応力強化のための地域の社会的ネットワークの役割と意義を、東北被災地の生活復興とコミュニティの現状を長期間にわたり詳細に調査することにより、明らかにしていこうとするものである。その目的達成のため、2013年12月に東北被災地を対象に実施した生活復興調査の成果を基盤としつつ、新たに質問紙調査、事例調査、国際比較調査を本科研費を用いて実施することとしている。 2020年度に予定していた被災地住民に対する質問紙調査は、コロナ感染症の拡大に伴う外出制限など人々の社会生活の変化や、研究代表者の業務上の都合等のため、一年間延期し、2021年末に実施した。 その結果、当初予定の2021年度末までの3年間では、質問紙調査の結果の取りまとめと長期の生活復興過程の分析まで行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
当初3年間の予定であった研究を4年間に延長する。東日本大震災3年後と11年後の2時点の詳細な生活復興に関するパネルデータを整備できたので、今後、当該データを用いた実証分析によって、長期間の生活復興過程の実態を把握するとともに、被災地住民間の社会的ネットワークが災害回復力にどのような役割を果たしていたのか明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症等の影響を受け、被災地への訪問調査や質問紙調査の実施が遅れたことから、調査自体は終了したものの、まだ調査結果の取りまとめと分析ができていない。次年度繰り越しとなった調査研究費を用いて、2022年度内にデータの整理と分析を行い、研究論文を作成して成果を発表する予定である。
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