今年度は、貨幣錯覚を仮定したDSGEモデルに関する論文"Inflation Response in a New Keynesian Model with Money Illusion"に関して、前年度から引き続き修正を行った。 また、リレーションシップバンキングをDSGEモデルに取り込んだ分析に関する論文"Introducing Relationship Lending into a Macroeconomic Model"の執筆は昨年度より継続しており、今年度は細部の修正や英文校正などに取り組んだ。 今年度に新たに、地域の移動を明示的に考慮したDSGEモデルを構築し「地域の移動を考慮したマクロ経済モデルの開発」とするタイトルの論文を執筆した。この論文では、「都市」は「地域」よりも生産性が高く賃金も高い仮定がなされている。この仮定の下、家計は地域ごとに応じて異なる賃金に応じて移動先(労働する場所)を選択できる。具体的には、家計は、「故郷」と解釈できる地域から離れることによる不効用と賃金から得られる効用を勘案して移動先を決める。主な分析内容としては、定常状態に限った分析では、愛郷心を示すようなパラメータの上昇は、家計を故郷に戻すような働きをする。これは生産性が高い地域の人口を減らし、生産性が低い地域の人口を増やす結果となる。このことから、都市の生産量は減り、地方の生産量は増える結果となった。しかしながら、一国全体としては減少する結果、すなわち愛郷心を示すようなパラメータの上昇はマイナスサムを生む結果となることがわかった。 上記の論文「地域の移動を考慮したマクロ経済モデルの開発」については、所属の山形大学にて開催された「令和4年度異分野交流学会」にて発表した。 https://www.yamagata-u.ac.jp/jp/information/event/guide/8/
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