研究課題/領域番号 |
19K01669
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
生藤 昌子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60452380)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環境産業政策 / 国際貿易 / 再生可能資源 / 木質バイオマス |
研究実績の概要 |
本研究は地球温暖化政策が地域内の自然環境に負荷を与え、グローバルな環境とローカルな環境がトレードオフの関係となりうる点に注目し、地球温暖化政策と国内の自然環境政策が国際貿易に与える影響を理論分析するものである。再生可能エネルギーである木材バイオマスエネルギー使用は化石燃料使用を削減する点において重要な温暖化対策である一方、投入物である木材ペレットの生産供給は森林保全に大きな影響を与える。今年度は、実証研究に応用可能な理論モデルの構築を中心に研究を行なった。
当初は森林資源の複数の代替的な利用価値(木材ペレット・一般的な木材製品・森林自然の本質的な機能)をモデル化する予定であったが、最終エネルギー部門、木質バイオマスエネルギー生産部門とその生産投入物としての木材ペレットの国内生産部門、バイオマス以外の再生可能エネルギー部門と複雑なため、基本モデルは木材ペレット生産と、それによる森林自然破壊だけを想定した。特に国内森林保全に負荷を与える可能性のある木材ペレット生産部門は、国際貿易の実証研究での基礎となる重力モデルと整合的にするため、財のバラエティを導入した。それぞれの部門の単位当たり費用について、環境税および生産技術パラメータの比較静学分析を行い、木材ペレットの総需要は、化石燃料や他の再生可能エネルギーの価格と環境税や木材ペレットの生産技術パラメータに加え、木材ペレットの種類の数に依存し、輸入する木材ペレットの種類の数も影響し、その結果、国内森林保全への負荷にも影響を与えることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国際学会に参加して国際貿易の実証研究に複雑な理論モデルがどのように応用できるかの知見を得ることができ、実証モデル構築の見通しに役立ったが、生産部門が複雑な開放経済モデルと関数型は比較静学分析の結果を明示するためにさらなる検討が必要であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
理論モデルの比較静学を深めると同時に、木材ペレット・チップの国際貿易に焦点を当てた実証分析を進めていく。特に来年度は実証モデルの構築とデータ収集を主に行う。また、オランダで研究滞在時にバイオマスエネルギー発電所近隣での大気汚染問題が住民により提起された事例を知り、木材ペレット生産による森林保全問題だけでなく、バイオマスエネルギー生産による地域環境問題も理論モデルに考慮することも考えている。
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