本研究は地球温暖化政策と国内自然環境政策が木材バイオマスエネルギーの投入物である木材燃料の国際貿易に与える影響を分析することが目的である。理論分析では環境税のモデル化を変更し、環境政策の木材燃料の2国間の貿易量、またその結果である森林消失に対しての比較静学を行った。自国が国内森林保護のためバイオマスエネルギーの投入物価格に税金を課すとバラエティの数が一定であれば、その税の限界的増加により自国の森林減少は改善すると同時に、外国の森林減少も改善し、さらに木材バイオマス以外の再生可能エネルギーに対して補助を自国あるいは他国が行うと、自国・外国ともに森林消失を抑える可能性を示した。この結果をもとに2国モデルを実証分析のための重力モデルに拡張し、環境政策については木材燃料の輸入国・輸出国の差を変数に加えた重力方程式の推定を行った。推定結果は、次のとおりである。(1)輸入国・輸出国間で、それぞれの自国内の自然環境保護規制の水準の差については木材燃料の取引量には優位な影響はない、(2)二酸化炭素排出規制が輸入国の方が輸出国より厳格な場合、木材燃料の貿易価値・量ともに増加する、さらにデータを国土面積の森林ストックの世界的な中間値である31%以上と以下のサブグループに分け、輸出国の木材燃料供給能力を考慮すると、(3)自然環境保護規制が緩い輸入国は自国内の木材燃料の生産に加え、大きな森林ストックを有する輸出国からの木材燃料取引量は有意に増加する、(4)二酸化炭素排出規制が輸入国の方が厳格な場合、大きな森林ストックを有する輸出国からの木材燃料取引量は有意に増加する。 保護指定された森林面積データは分析を行った2012年から2019年の間の変化が国家間で重複したり湖水・川も含まれていたり複雑で、データ整理に時間を要し、最終目標である公刊までは達成できなかったが、現在、論文作成を進めている。
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