研究課題/領域番号 |
19K01671
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
青木 周平 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (00584070)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 投資信託 / 金融の成長 / 経済格差 |
研究実績の概要 |
研究代表者らが以前開発した異質的な家計と企業からなる動学的一般均衡モデルに、(1) ハイリスク・ハイリターンの個別株、(2) ミドルリスク・ミドルリターンの投資信託、(3) ローリスク・ローリターンの安全資産の3つの資産が存在し、家計が最適ポートフォリオ選択を行う設定を組み入れたモデルを開発した。このモデルについて具体的には、投資信託が、有限個の個別株から構成されるバージョンと非可算無限個の個別株から構成されるバージョンの2つのバージョンを作成した。前者のバージョンは定式化がシンプルであるという特徴をもち、後者のバージョンは、各個別株固有のリターンのショック(個別ショック)と個別株全体で相関しているリターンのショック(アグリゲートなショック)の関係を、現実と同様に設定できる特徴を持つ。これらのモデルを用いて、1980年代以降に現実に観察される投資信託のコストの低下と所得税などが投資信託の資産シェアの増加に寄与するかなどを定量理論的に分析した。上述したそれぞれのバージョンに対応する2つの論文の草稿を完成させた。 2つの論文の内容は以下のように要約される。いずれの論文でも、投資信託コストの低下などによって、1980年代以降のアメリカで観察される投資信託の資産シェアの増加の大部分を説明できることを示した。その主要な理論的な要因は、投資信託のコストの低下によって、投資信託の期待リターンがそのリスクに比して上昇し、全資産に占める投資信託の割合を増やすことが家計の最適な選択になるためである。2つ目の論文では、投資信託コストの低下が金融部門の成長に与える効果も分析した。令和3年度中にこれらの論文を英文査読誌に投稿していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、新型コロナウイルス問題のため、オンライン授業を行うことを要請され、就労時間のうち多くをオンライン授業への対応等に割く必要が生じた。そのため、十分な研究時間を確保することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度中に作成した、投資信託に関する2つの論文を英文査読誌に投稿していきたい。また、研究計画にある長期の経済格差の推移を説明するモデルの開発に現在取り組んでいる。この研究については、令和3年度中に分析を行い、論文の草稿を完成させることを目指す。新型コロナウイルスの問題があるため、研究発表を行うことよりも論文の形にまとめていくことを優先したい。
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