地域経済にとって,当該地域の主要産業部門を把握することは重要な課題のひとつである。従来,主要産業の特定には,計算が比較的容易な特化係数およびその修正版が用いられてきた。特化係数は比較的容易に入手できるデータをもとにして計算できるため,市町村レベルなどの小規模の地域経済分析には有用な手法である。しかしながら,この方法で地域経済内の産業部門間の相互依存関係を考慮することは難しい。 産業集積に代表されるとおり,ある産業部門は,現実には地域経済内で独立して活動しているわけではない。産業連関分析には,産業部門間の連関性についての多くの手法・知見が蓄積されており,産業連関モデルをもとにした連関性指標を用いた産業部門の類型化が可能である。しかし,一部の連関性指標の計測には高度な計算処理能力を要するため,行政関係者や実務家にとって利用困難である。また,それらの有用性を評価するために,様々な連関性指標について解析的・実証的検証を行う必要がある。 本研究は,上記の検証結果を反映させ,比較的簡便な方法で計算可能な連関性指標を用いて,地域経済の主要産業を把握する簡便な方法を確立することを主たる目的とする。この目的のため,当該年度に行った研究実績は下記のとおりである。 (1)数値計算ソフトウェアの実装と地域産業連関分析の基本モデルの運用,(2)地域産業連関表の収集・整備,(3)地域産業連関表の作成主体である行政への聞き取り調査(島根県庁),(4)公開セミナーの開催(静岡県静岡市,関連学会との共催)。 これらの活動を通して,本研究課題の研究対象に対する行政のニーズを把握し,学会内での関連研究に関する情報収集,行政担当者との情報交換を進めた。なお,本研究課題の成果の一部が2022/03/09静岡朝日テレビのニュース番組,2022/04/04『静岡新聞』社説「伊豆の温泉活用策」にて報道された。
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