研究課題/領域番号 |
19K01673
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
吉田 裕司 滋賀大学, 経済学部, 教授 (40309737)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 経常収支 / 短期資本流入 / 株式市場連動性 / 資本流入連動性 / Glick-Rogoffモデル |
研究実績の概要 |
研究論文"International Portfolio Rebalancing and Equity Market Spillovers"については、日次の国際資本移動データを用いることで、一国への外国資本流入と国内株式市場の株価の関係性を分析した。また、アジア地域、欧州地域、北米地域、南米地域、アフリカ地域、中東地域、と地域内に限定した上で、二国間における資本流入の連動性と株式市場の価格連動性の分析を行った。四つの相関に対して二つの制約条件を満たす基準を提唱することで、真の連動性の高さを示す方法を提唱した。その方法によると、アジア地域の発展途上国間が、他の地域と比べて高い連動性を示すことが判明した。 研究論文"Revisiting the Glick-Rogoff Current Account Model: An Application to the Current Account of BRICS Countries"については、Glick and Rogoff(1995)が提唱した経常収支実証モデルをBRICS諸国に適用した実証分析である。Glick-Rogoffモデルでは、各国特有の生産性ショックと世界生産性ショックが経常収支に与える影響に主点を置いている。世界金融危機前までの分析では、Glick-Rogoffモデルの経済成長の著しい発展途上国であるBRICSへの当てはまりは、先進国よりも高いものであった。但し、世界金融危機を含める期間に延長すると、とたんに説明力がゼロに近づいてしまう結果も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に最終的な刊行になるまでの完成度は達成出来なかったが、二つの研究論文に取り組むことが出来た。資本流入に関する研究については、論文の初稿が完成まで至っていないが、国内の学会において二度の発表をする機会があり、多くのコメントを受けることが出来た。 生産性ショックが経常収支に与える影響を分析した研究はについては、学会発表は出来ていないが、working paperとして刊行した。また、Gilles Dufrenot氏(Aix-Marseilles大学)と松木隆氏(大阪学院大学) 共編著による洋書(出版予定は2020年)の一つの章として掲載することが確定された。
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今後の研究の推進方策 |
資本流入の日次データを用いた実証分析を精緻化していき、研究論文として刊行を目指す。本年度は、物理的な移動を伴う国際学会の開催並びに参加が非常に困難だと思われるが、これまでの研究ネットワークを活用したり、オンライン国際会議等に積極的に参加することで、論文改訂のためのコメントを得れるように努力する。今年度中に コメントを反映させて研究論文を完成させ、working paperとして公表と同時に国際学術誌(journal)に投稿を目指す。 また、本科研費研究課題のきっかけでもある、経常収支を貿易収支と所得収支に分解した実証分析に着手する。今年度は、世界的な経済危機へ進みつつあるため、これまでにない経常収支の動きが観測される可能性が高い。これをanomalyとして片づけるのではなく、これまでに経験した世界金融危機(2008~)との共通点を模索しつつ、これからの将来の政策提言につながるような研究分析を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外研究者(レンヌ、フランス)との研究打ち合わせのための海外渡航の際、別の研究プロジェクトにおいての海外研究打ち合わせ(アンタルヤ、トルコ)を前の週に行ったため、海外旅費が後半の片道分に節約されたことが、次年度使用額を生じさせる理由である。
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