研究課題/領域番号 |
19K01673
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
吉田 裕司 滋賀大学, 経済学部, 教授 (40309737)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 経常収支 / 所得収支 / 貿易収支 / 構造VAR |
研究実績の概要 |
(1) 日本の経常収支に関して構造ベクトル自己回帰モデル(Structural VAR)を用いた実証分析の研究を進めた(共同研究者: Weiyang Zhai氏、滋賀大学)。具体的には、Forbes et al. (2017, Economic Journal)に刊行された、英国の経常収支に関する実証分析の研究方法を踏襲して、日本の経常収支分析に応用した。しかし、我々の研究の新たな貢献として、Forbes et al. (2017)のモデルと大きく異なる点もある。(i) Forbes et al. (2017)では、ストックとしての国際収支に着目して対外純資産を取り扱ったが、我々の研究ではフローとしての所得収支を取り扱っている。(ii)Forbes et al. (2017)では、対外純資産(フローとしては所得収支に対応)に注目したが、我々の研究では、所得収支に加えて貿易収支も同時に取り扱っている。(iii)Forbes et al. (2017)では、収支の概念を用いて分析を行っていたが、本研究ではフロー方向別(所得支払、所得受取、輸出、輸入)に分解をした分析を行っている。(iv)上記の理由から、Forbes et al. (2017)では8変数VARであったが、我々の研究では10変数VARとなっている。
(2) 日本の為替レートパススルーの構造ショック別の推計を行う共同研究を進めている(共同研究者: 佐々木百合氏、Weiyang Zhai氏、Siyu Zhang氏)。こちらの研究も、構造ベクトル自己回帰モデルを用いているが、前述の研究方法とは大きく異なる。こちらは、Forbes et al (2018, Journal of International Economics)の研究論文の分析手法を参考にして、日本の為替レートパススルー推定に応用したものである。英国の研究分析とは異なり、グローバル要因による為替レートパススルーはゼロであることは統計的に棄却できない。既に、RIETIのERIC研究会では中間報告も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の中心である「日本の経常収支を所得収支と貿易収支に分解して構造VARモデルの推定」については、研究論文の初稿が完成して、既にRIETIのERIC研究会で中間報告、フランスのUniversity of Rennes Iが主催の国際カンファレンスにて基調講演研究論文として報告を行った。また、2021年度には日本経済学会での研究報告が内定している。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 「日本の経常収支を所得収支と貿易収支に分解して構造VARモデルの推定」の研究に関しては、フランスの国際カンファレンスにて受けた有益なコメントを反映させた改訂を行う。また、2021年5月に日本経済学会にて研究報告を行い、そこで受けるコメントも反映させて更なる改訂を行う。改訂後には、RIETIのディスカッション・ペーパーして刊行を行い、査読付き国際学術誌(journal)に投稿を行う。
(2) 「日本の為替レートパススルーの構造ショック別の推計」の研究に関しては、国内外の学会などの研究報告を経て、速やかにRIETIのディスカッション・ペーパーして刊行を行い、査読付き国際学術誌(journal)に投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のために、予定していた海外への学会への参加が出来なくなったことが、次年度使用額が生じた最も大きな理由である。 翌年度(2021年度)に関しては、新型コロナウイルス感染問題が改善され、海外渡航が現実的になれば、積極的に海外学会等において研究成果を報告したい。 ただし、今年度内に新型コロナウイルス感染の状況が大幅に改善しない場合には、3年間の研究計画を4年間の研究計画に延長することも検討している。
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