研究課題/領域番号 |
19K01677
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
板倉 健 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (90405217)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 貿易戦争 / 貿易政策 / グローバル・バリューチェーン / GVCs / CGE / 応用一般均衡 / FTA / EPA |
研究実績の概要 |
自由貿易協定や経済連携協定により貿易と投資の自由化が進展する一方で、協定脱退や新たな関税措置等による貿易摩擦の高まりがある。本研究の目的は、貿易自由化と貿易摩擦の経済効果を分析可能とするグローバル CGE モデルを開発し、経済連携協定と貿易摩擦の経済的な影響を複数の将来政策シナリオによる数値シミュレーションにより明らかにすることである。また、分析モデルにグローバル・バリュー・チェーン(GVCs)構造を組み込むことで、当該国家間の貿易政策が、輸出入や国内供給による各国各産業の中間財取引を通じて、他国の産業に波及する経路について分析を行う。GVCs構造を備えた逐次動学型グローバルCGEモデルを用いて、FTA・EPAや貿易摩擦の経済効果を数量的に分析した研究はわずかであるため、本研究課題は先駆的な取り組みであり、これまでの研究活動から実現可能な領域にあると期待できる。 2019年の研究実績として、関税措置が相互に応酬された米中貿易戦争を対象として、その経済的影響をGVCs構造を備えた逐次動学型グローバルCGEモデルを用いて試算・分析し、学術論文として発表した。その後の貿易戦争のエスカレートやそれに続く休戦による関税措置の相互緩和情報を反映した影響分析結果について、国際学会での研究報告を行った。また、国内学会等での複数回の研究報告を行った。研究進捗から得られた新たな知見として次のことが分かった。従来型のCGEモデルに採用されている国際貿易の定式化(モジュール)による分析結果と比較して、GVCs構造を組み込んだモデルでは貿易戦争当事国への負の影響が抑制される一方で、GVCsを通じた他国への負の影響の伝播がより顕著となり、世界全体への負の影響がより拡大する。次年度は、引き続きモデル比較を行いつつ、新たなシナリオ分析への応用を行うことで、研究手法の開発を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の一つである、貿易自由化と貿易摩擦の経済効果を分析可能とするグローバル CGE モデル開発において、グローバル・バリューチェーンを組み込んだ逐次動学型グローバルCGEモデルによる分析が可能となった。米中の貿易戦争を関税措置の相互による応酬として分析シナリオで表現し、潜在的な経済的影響を考察することが可能となった。分析結果を論文と学会での研究報告としてまとめることができたことが本年度の成果といえる。
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今後の研究の推進方策 |
米中貿易戦争による関税措置は、継続的な緊張や部分的な緩和を繰り返し、現在に至るまで継続している。そのため、現況を反映する分析シナリオの更新方法についての検討が必要となった。また、GVCsデータやCGEモデルに使用するGTAPデータの更新もあり、分析に使用するデータやシナリオの更新作業を2020年度には予定している。分析モデルの挙動確認や精緻化も継続して実施する。
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