研究課題/領域番号 |
19K01681
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
北野 泰樹 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 准教授 (70553444)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 中古車市場 / 環境対応車 / 減税・補助金 / 政策評価 / 構造推定 |
研究実績の概要 |
当年度は,中古車市場に大きな影響を与えたといわれる2009年に導入されたスクラップインセンティブ付きの補助金政策の効果についての構造推定論文を改訂の上,再投稿した.関連し,経済セミナーに自動車市場を題材に需要関数の推定に関する論文を寄稿した. 先述の構造推定の論文では,補助金政策の効果の短期的効果(政策期間中の効果)だけしか評価ができていなかったが,一時的な政策介入は異時点間代替に伴う政策後の販売台数の減少をもたらす可能性がある.そこで,政策設計上,都道府県間で政策の影響(policy exposure)が異なることに注目し,政策の中期的な影響を評価した.分析の結果,補助金政策は短期的な販売台数の増加をもたらす一方,政策終了後の期間での販売台数の減少効果は確認されないことを示した.この分析の結果は,大阪市立大学での研究会,小樽商科大学で開催されたSummer Workshop on Economic Theoryで研究報告した. 本研究課題のメインのトピックである中古車市場の分析については,PROTO社から提供を受けたデータのダウンロードと整備を進めた.データサイズが2TBを超えるいわゆるビッグデータであるため,作業に時間を要しているが,分析可能なデータベースへの変換を進めた. なお,本研究課題では,産業組織論系の論文を中心とする研究会であるSapporo Workshop on Industrial Economicsを3月に小樽商科大学で開催する予定であったが,新型コロナウィルス感染症の影響から中止(延期)した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中古車価格データのデータサイズが大きく,データベース管理のため,My SQLを新たに学ぶ必要があり,分析のためのデータベースの作成に時間がかかっている.また,論文の再投稿にも時間がかかったことで,当初の予定より少し遅れている.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の三点にまとめられる. 一つ目は,補助金政策の中期的な影響を評価した論文は主要な結果が出てきているので,翌年度は論文にまとめ,学術誌に投稿したい.この研究成果は,慶応義塾大学で6月にオンラインコンファレンスとして開催される,International Workshop on Transportation and Environmentでの報告を予定している.これ以外にも,シンガポールで開催予定のAsia Pacific Industrial Organization Conferenceでの報告に応募し,(情勢が許せば)研究報告を実施したい.国際会議以外にも,国内の産業組織論系の研究会(東京大学社会科学研究所の産業組織研究会など)での報告も実施したい. 二つ目は,今年度はPROTO社から提供を受けた中古車価格データの整備を引き続き進める.今年度中にデータベースを完成させたうえで,中古車の輸入規制がもたらす中古車価格への影響の分析と,スクラップインセンティブ付補助金政策が中古車価格に与えた影響の評価を行いたい. 最後に,最新の研究成果の調査と意見交換を目的として,日本経済学会,産業組織研究会(東京大学),ポリシーモデリングワークショップ(政策研究大学院大学)に参加する.また,当年度は中止となったSapporo Workshop on Industrial Economicsの開催を計画している.
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度末に開催予定であったコンファレンスが新型コロナウィルス感染症の影響で延期となったことと,論文の執筆に遅れが生じたため,当初使用予定であった英文校正費用を使わなかったことで,研究費に残額が生じた.コンファレンスは翌年度に改めて実施し,英文校正も翌年度に依頼をする予定である.
|