研究課題/領域番号 |
19K01687
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
新熊 隆嘉 関西大学, 経済学部, 教授 (80312099)
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研究分担者 |
東田 啓作 関西学院大学, 経済学部, 教授 (10302308)
村上 進亮 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40414388)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 資源の呪い / アフリカ / 紛争鉱物 / ドッド・フランク法 |
研究実績の概要 |
紛争鉱物の市場からの締め出しを狙ったドッド・フランク法の有効性をGravity modelを用いて検証した。データ構築に予想以上の時間を要したため、現在はいまだ試験的な段階ではあるが、紛争鉱物の一つであるタングステンの2国間貿易データを構築し、以下の結果を確認した。第一に、輸入国の鉱工業粗付加価値額は輸入にプラスの影響を与える。第二に、ドッド・フランク法施行以前は、貿易量が距離から負の影響を受けていたが、法律施行後は、距離の影響は有意ではなくなった。これは、ドッド・フランク法がタングステンの貿易ルートに影響を与えたことを示唆するものと考えられる。第三に、紛争地域国からの輸出が法律の施行によって減少したことも確認された。これが紛争鉱物の市場からの締め出し(生産の減少)を意味するのか、他国への迂回的な輸出によるロンダリングを意味するのかは現段階では明らかではない。 そして、ドッド・フランク法が紛争鉱物のサプライチェーンに与える影響を精査するため、ネットワーク分析の手法をタングステンの貿易データに適用したマテリアルフロー分析を行った。その結果、次のことが明らかとなった。第一に、ドッド・フランク法の施行以前は、法律の規制対象国を中心としたアメリカクラスターと非対象国の中国・ロシアクラスターが存在しており、紛争地域はアメリカクラスターに属していたこと。第二に、法律の施行後は、アメリカクラスターの紛争地域からの調達が減少する一方、紛争地域が中国・ロシアクラスターに吸収されたことがわかった。 Gravity modelを使った分析結果とネットワーク分析によるマテリアルフロー分析結果は相互に補完しあっているという意味で整合的な結果となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Gravity modelもネットワーク分析によるマテリアルフロー分析も学術論文に掲載可能なレベルにあるとは言えず、更なる改善を要するが、理論的に整合的な新しい知見を生み出すような実証結果を出しており、必ずしも遅れているとは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
Gravity modelおよびネットワーク分析によるマテリアルフロー分析に改善を加える予定である。とくに、ドッド・フランク法施行後の、ロンダリングすなわち迂回的な貿易のより客観的な証拠を与えるような実証分析を遂行したい。そして、その成果を論文としてまとめる予定である。
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