研究課題/領域番号 |
19K01688
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
春日 教測 甲南大学, 経済学部, 教授 (50363461)
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研究分担者 |
宍倉 学 長崎大学, 経済学部, 教授 (40444872)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 情報伝達 / バイアス / メディア企業 / 寡占化 / 不確実性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、新旧メディアが提供する情報がバイアスを受ける過程に関する幾つかの仮説を、需要面・供給面から定量的に検証し、新たな規制課題を検討することで競争政策の在り方への示唆を得ることである。初年度にあたる本年は、需要側から情報の不確実性と受け手の注目度の高さとの関係に関する研究について内容を検討することを主目的としていた。年度前半は海外滞在の機会を活かし、所属先大学や近隣の欧州各国で開催される国際学会出席・発表し意見交換を行った。また帰国後の年度後半では、成果を論文として取りまとめた。内容は以下のとおり。 情報の不確実性と受け手の注目度の高さとの関係の分析には、スポーツ経済学分野を対象としテレビ視聴者市場データを利用することがあり、近年進めてきたメディア経済学の枠組みが有望であることが示唆された。ただし経済理論の発展に伴い分析手法も変遷してきており、試合結果の不確実性とスタジアム観客数との関係検証から、テレビ視聴者を対象にした分析にシフトし、最近では心理的側面を取り入れた分析へと推移してきていることもあり、分析目的と位置づけを明確にする必要があることも確認できた。さらに、スポーツの試合を対象としつつ、製品・サービスの代替性/補完性といった産業組織上の論点を検証する研究も増加してきており、今後の方向性としては例えば試合観戦者のSNSによるスポーツ実況が観客数や視聴者数に与える影響を検討することなどが考えられるかもしれない。このように分析拡張の方向性についても一定の目途を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい研究テーマの申請および構想を練る時期に所属大学から海外滞在する機会を得ることができたため、時間的余裕を活かすととともに多くのセミナー・国際学会に参加することで最新の研究テーマや分析手法に触れることができ、良い刺激になった。延べ6回の国際学会発表、セミナーでのコメントも行うことができ、自身の考え方の整理と別角度からの論点検討に有益な情報を獲得することができた。 反面、実証研究を行うには金融や通常の産業組織論等の分野と異なりやや特殊なデータを入手する必要があるため、対象市場である日本のデータは海外滞在中には入手しにくい点が難点であった。ただし帰国後は、論文サーベイとともにデータの所在を明らかにする作業も並行して進めており、整備を始めればさほど時間はかからないと考えられるため、現時点ではおおむね順調に進展していると言ってよいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
サーベイとしてまとめた論文に基づき、分析手法の中から適用可能な分野を絞り実証分析する作業をすすめることが課題である。やや特殊なデータであるためデータを保持している機関と利用可能性について交渉する必要があるが、感染症対策で移動が制限されているため、遠隔通信ツール等を利用してスムーズに交渉が進む道を模索したい。 懸念事項として、アンケート調査を行う手法も近年有望となってきており、これを実施する手法との長所・短所を検討する必要がある。必要性・緊急性を十分吟味したうえで、金銭的リソースをうまく配分して、可能ならば実施し研究成果の充実に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究実施計画の初年度であり必要となるデータ種類を見極めるために慎重に研究手法をサーベイする必要があったこと、また研究組織構成員の1名が研究年度前半は海外滞在しており日本の特殊なデータ収集が困難だったこと等により、繰越額が生じる事態となった。使途は明確になってきており、2年目にデータ購入を考えている。
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