研究課題/領域番号 |
19K01688
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
春日 教測 甲南大学, 経済学部, 教授 (50363461)
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研究分担者 |
宍倉 学 長崎大学, 経済学部, 教授 (40444872)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 情報伝達 / バイアス / 広告 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、新旧メディアが提供する情報とバイアスとの関係について、現状把握とともに課題を明確にすることである。3年目として本来はまとめの時期ではあるが、コロナ禍によって実験実施ができなくなった影響で計画を見直し、以下の2点を中心に研究を行った。 1つ目は、サステイナブル投資の選好に関する分析である。環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)の頭文字をとってESG投資とも呼ばれるが、コロナ禍で呼びかけられたテレワークはEまたはSとも密接に関連している。アンケートに基づく分析では、金銭への忌避感が強い場合サステイナブル投資に積極的な態度が観察された。一方、環境問題の知識を測るリテラシーの高さは、投資選択とは統計的に有意な関係が認められなかったが、環境モラルの高さはサステイナブル投資を抑制する効果を一部にもっており、事前の予想に反する結果となった。 2つ目は、二期間モデルを適用した耐久消費財企業の広告戦略分析である。耐久財企業は、オンライン広告およびマスメディア広告という2種類が利用可能であり、異質な消費者を対象とする販売戦略を考える。分析結果では、オンライン広告が競争均衡における消費者と製品のマッチングの総数を増加させることが示される。また企業は、広告戦略の適切な組み合わせによって、広告費用は増加させつつも収益を増加させることを示した。 以上を学会発表で行い、これまでの研究の精査ととりまとめは1年延長して行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初「(II)映像 対 テキスト情報といった伝達内容による受け手に与える影響の相違」に取り組む予定であったが、前提としていた実験が実施困難となったことから、研究計画の大幅な変更を余儀なくされたため、1年研究期間を延長し、これまでの研究内容の精査を実施するとともに、研究内容を再編しつつとりまとめを行うこととした。特に、直接的な関連性は強くないものの、本研究テーマを補完可能な研究については完成稿を仕上げる時間があまり確保できずにいたため、よい機会となったと前向きに捉え直したい。 2022年度は対面実施される国際学会がいくつかあり、この延長によって現地での発表・討論が可能だと期待される。オンラインで実施された学会発表の結果も利用しつつ、最終的な成果物の作成に取り組みたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
海外では国際学会を対面で行う国もあるので、こちらへの参加とコメントを基にした修正・投稿に取り組みたい。主要なテーマは、以下のとおりである。 (1)政治スキャンダルに関する新聞記事を事例にとり、その報道の多寡から、メディア企業の行動が、空間競争モデルと政治バイアスモデルのどちらにより適合するかを実証的に検証する論文。補足的な内容もあるのではないかと考えられるので、複数論文にする可能性も含めて検討したい。 (2)特に耐久消費財を製造・販売する企業が、オンライン広告と伝統的なマスメディア広告のどのような組み合わせで行動するかを理論的に考察する論文。1期間モデルを利用して、企業の広告選択パターンの相違によって、利潤や総余剰がどのように変化するのか、検討したい。 さらに、(3)個人のサステイナブル投資への選好を分析した論文については、英文化をすすめ、投稿を行う予定である。(4)ネット動画配信の参入による視聴環境変化が公共放送に与える影響の分析については書籍の1章として執筆するとともに、英文雑誌への投稿についても並行して行っていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により参加予定だった国際学会が相次いで中止となり、また投稿論文の執筆も遅れ気味となったことから予算に余裕が生まれたため、次年度に繰り越すこととなった。今期を最終年度と考え再編成し直し、派生的な研究課題も発表しつつ、計画的に執行を行っていける予定である。
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