研究課題/領域番号 |
19K01693
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
坂本 直樹 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (80367937)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地方財政 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「幸福度調査」に「地方財政状況調査」を組み合わせたデータセットを作成して幸福度関数を推定することにより、地方公共団体の財政構造や財政運営が住民の幸福度にどのような影響を与えるか、地方公共団体がどのような財政運営を行うことにより住民の幸福度を高めることができるかを明らかにすることである。 本年度は、人口減少による自主財源の減少が地方公共団体における住民の幸福度ないしは生活満足度に大きな影響を及ぼすと考えられることから、研究計画になかった自主財源の減少による影響を研究に取り入れる目的で、自主財源の減少を是正する政策に対して人々がどのようなニーズを持っているかを尋ねるアンケートを実施した。具体的には、宝くじの収益金が自主財源の不足する地方公共団体に移転されるという仮想的なシナリオを想定して、そのような宝くじを年間でどれだけ購入したいか等についてインターネット調査を行った。 ただし、本年度についても新型コロナウイルスの感染拡大の影響を考慮して、幸福度に関するアンケートの実施は見合わせて、幸福度関数を推定して地方公共団体の財政を評価するために必要となる財政指標について主に検討した。財政力指数、経常収支比率、実質収支比率、健全化判断比率等の財政指標の他にも、歳入については歳入総額に占める自主財源や一般財源の比率(自主財源比率や一般財源比率)、歳出については個別の目的別歳出や性質別歳出に充当された一般財源の比率、債務残高については、地方債現在高や基金現在高の標準財政規模に対する比率など、さまざまな財政指標が考えられる。こうした「地方財政状況調査表」に示されない財政指標を試作するとともに、それを分析に適用することができるかどうか理論と実証の両面から検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を考慮して、幸福度に関係しないアンケート調査は実施したものの、幸福度に関するアンケートの実施は見合わせたため。
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今後の研究の推進方策 |
①「幸福度調査」の実施:全国を対象とした「幸福度調査」と、山形県を対象とした「幸福度調査」をインターネット調査により実施する。全国を対象とした「幸福度調査」は都道府県財政の経済評価を行うためのものである。この際、サンプルの偏りに対処するため、都道府県別に人口と年齢による割り付けを行う。また、山形県を対象とした「幸福度調査」は市町村財政の経済評価を行うためのものである。全国を対象とした「幸福度調査」では、市町村により回答者がゼロの場合もあり得る。本来であれば、1718市町村に対して人口や年齢による割り付けを行うことも考えられるが、調査会社がすべての市町村にモニターを抱えているとは限らない。この問題に対処するため、山形県を対象とする調査を行う。なお、本年度に実施した自主財源に関するインターネット調査の結果を踏まえて、「幸福度調査」には将来想定される自主財源の減少の影響などの地方財政の状況に関する設問を盛り込む。
②幸福度関数の推定による地方財政の経済評価:幸福度関数を推定して地方公共団体の財政を評価するために必要な経済理論(厚生測度等)および統計手法(順序反応モデル等)について今年度検討した事項を踏まえて、「幸福度調査」に「地方財政状況調査」を組み込んだ幸福度関数を多重レベル分析により推定し、地方公共団体の財政構造や財政運営の経済評価を行う。ただし、「地方財政状況調査表」は地方公共団体ごとに数多くのデータ項目があり、これらをすべて同時に幸福度関数の説明変数として組み込んで分析するのは現実的ではない。そこで、「地方財政状況調査表」のデータを歳入、歳出、財政指標の3つのカテゴリーに分け、カテゴリー別に幸福度関数を推定して分析する。なお、本年度に検討した「地方財政状況調査表」にない財政指標に関する分析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を考慮して幸福度に関するアンケートの実施を見合わせたため。今年度未使用額は次年度、幸福度に関するアンケート調査を実施するために用いる。
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