研究課題
2022年度はこれまでの研究を踏まえ,ごく緩やかな仮定の下で複数属性を考慮して社会厚生を評価する手法とその応用事例を示した.第一に,Atkinson and Bourguignon (1987)による逐次的一般化ローレンツ支配(SGL)基準の複数属性への拡張を図った.SGL基準では,主体の特性(世帯人員など)を除いて,各主体の厚生は一つの属性(例えば所得)によって定まるとされている.本研究では,これを各主体の厚生が複数の属性に依存するとして社会厚生を評価するように拡張した.社会厚生の評価において想定される各主体の効用関数は,SGLやこれを拡張したJenkins and Lambert (1993)やChambaz and Maurin (1998)で想定されている性質と基本的に同じである.研究では,提案した支配基準の成否を判別する手法を提示するとともに,これを用いて国連の人間開発指標(HDI Index)に基づき,開発途上国とそれ以外の国々と言う特性の違いを考慮して世界全体の厚生分布を評価した.第二に,国連による人間開発指標(HDI Index)やSDGs Indexなど,いくつかのサブ指標を集計して国や地域の厚生を評価する指標において,サブ指標間の代替性の程度と各サブ指標の凹性を考慮することによって,比較対象国間で各国が取り得る順位の範囲を明らかにする方法を開発した.提案した手法は,ローレンツ支配基準に基づくが,ローレンツ支配が各国の厚生を一対比較で判別するのに対して,多国間での各国が取り得る最高順位と最低順位を求めるものである.この方法を適用して,SDGs指標の各国の順位を示した.研究期間全体を通じて,複数の属性に依存する社会厚生の評価手法をその応用事例も含めて提示するとともに,公共財の自発的供給にも応用するなど,研究の拡がりを持たせることができた.
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Working Paper, No.352, 2023.03, School of economics, university of toyama
巻: 352 ページ: 1-11
10.15099/00022290
Working Paper, No.356, 2023.03, School of economics, university of toyama
巻: 356 ページ: 1-17
10.15099/00022316