研究課題/領域番号 |
19K01697
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宮崎 毅 九州大学, 経済学研究院, 教授 (40458485)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 財政分権化 / 市町村合併 / 範囲の経済 / 選好の異質性 |
研究実績の概要 |
2021年度は、地方政府の合併に関する理論と実証分析の学会報告と査読雑誌での出版、および合併に関する市町村データベースの作成と修正を行った。 第1に、地方政府の合併に関する理論と実証研究を海外の査読雑誌に投稿し、これらの論文は既に掲載されているか、修正を要請されている段階である。まず、日本における市町村合併を疑似自然実験として利用し、民族の多様性が地方公共財供給に与える影響を推計した。推計の結果、民族の異質性が高まると生産的な(純粋な)公共財の供給は相対的に減少し、非生産的な(或いは特定の利益団体に向けた)公共財の供給は増加することがわかった。この研究は、海外の査読付き雑誌に掲載されている。 財政分権化と地域の異質性に関する理論研究も行った。Oatesの分権化定理から示唆される結果とは異なり、効用関数の形状によっては、2地域間の異質性が高まると分権化によって全体の厚生が減少することが示された。合併の理論分析と財政分権化に関する理論研究は基本的に同じモデルを用いることから、本研究は合併の経済分析にも重要な示唆を示すものである。この研究は、海外の査読雑誌から修正を要請されている。 第2に、合併と関連して、地方政府の公共サービスに範囲の経済があるのかに関する実証研究を学会で報告した。市町村合併の費用削減効果は規模の経済の観点から議論されるが、合併によって権能の範囲が変化したケースも多いことから、日本の地方政府において範囲の経済が存在するのかは合併の効果を議論する際に重要である。この研究は、財政学で世界最大のIIPFで2021年8月に報告した。 第3に、合併に関する市町村データベースの作成と修正を行った。未合併のケースについて任意協議会、法定協議会の設置状況、また協議会からの離脱、協議会の解散の状況、合併に対する立場など必要なデータベースの作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連する理論研究を海外学会で発表したほか、関連する実証分析を出版できたため。
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今後の研究の推進方策 |
合併に関する市町村データベースが完成し、データベースの確認も行ったため、今後合併が地域の人口に及ぼす影響の推計を行う。また、合併後の人口移動に関する理論モデルを構築し、合併後、どのような条件の下で中心部と周辺部に人口が移動するのか、合併しない地域の人口はどのように変化するのかなどを理論的に分析する。最後に、範囲の経済が合併の効果を分析する際にも重要であることがわかったことから、合併に伴う範囲の経済の拡大が地域の人口移動に及ぼす影響についても考察したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施予定であった、英文校正と学会発表を次年度に実施するため。
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