最終年度に遂行した研究は以下のとおりである。(1)前年度に構築した「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」2019年調査のデータセットについて詳細に検討した結果,2019年度調査の一般公開用データセットには,児童生徒の家庭環境に関連する情報が不足していることが判明した。児童生徒の家庭環境に関する情報は,アカデミック・レジリエンスを検討する上で必須の情報である。これに対応するため,研究者用に限定的に公開が認められるデータの利用を申請し,受理された。これにより,児童生徒の家庭環境をより詳細に把握することが可能となり,アカデミック・レジリエンスをより詳細に定義することが可能となった。(2)【学術的な問い】の②「介入可能であれば,アカデミック・レジリエンスを高めるために有効な教育政策は何か」に関係する内容として,前年度に執筆・投稿した,学校レベルの生徒教師比率と教員のストレスの関連性についての論文の改訂作業を進めた。その結果,同論文は英文の学術論文雑誌に受理され,掲載が決定した。同論文はすでにオンライン版が公開されており,多くの研究者が閲覧・ダウンロードするなど国内外の注目を集めている。(3)【学術的な問い】の①「アカデミック・レジリエンスは個人固有の特性なのか,あるいは学校や教師を通じた何らかの介入によって高めることができるのか」に関連して,上記(1)のデータセットを活用した分析を進め,分析結果を概ねとりまとめた。 最終年度までの研究により,当初予定していた研究計画を概ね遂行することができた。
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