研究課題/領域番号 |
19K01703
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
濱秋 純哉 法政大学, 経済学部, 准教授 (90572769)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 世代間資産移転 / 相続税 / 生前贈与 / 遺産動機 / 脱税 / 租税回避 / 共通報告基準 / タックスヘイブン |
研究実績の概要 |
2022年度は,(1)自営業者の所得の過少申告割合の分析の査読付き英文学術雑誌への掲載,(2)遺産相続が相続人の労働供給に与える影響の分析の学会報告と査読付き英文学術雑誌への投稿・改訂,(3)富裕層の海外取引を用いた脱税・租税回避についてのデータ分析と海外の税務当局へのヒアリング調査を行った。以下で,(1)~(3)の詳細について説明する。 まず,(1)については,2021年度中に投稿した雑誌からの改訂のリクエストに応じて,分析や結果の解釈の修正を行い,最終的に受理・掲載された。 つぎに,(2)については,日本経済学会で論文を報告し,そこで討論者から受けたコメントに基づいて改訂作業を行った。また,その後論文を投稿した雑誌から改訂のリクエストがあったため,分析や結果の解釈の修正作業を行った。 最後に,(3)については,2014年にOECDで導入が承認された「共通報告基準(CRS)」に基づく非居住者金融口座情報の各国税務当局間での自動的交換が日本居住者のタックスヘイブンを利用した脱税に与えた影響をデータ分析し,分析結果を他大学や学会の研究会で報告した。また,イギリスとドイツの税務当局等に富裕層の海外取引を用いた脱税・租税回避への対処策についてヒアリング調査を行った。具体的には,イギリスについては歳入関税庁(HMRC)と会計検査院(NAO),ドイツについては連邦財務省を対象として,1.(富裕層の)脱税・租税回避対策の担当部署の概要,2.納税者が国内及び国外に保有する財産の把握方法,3.CRSの回避への対処,4.国外居住や国籍変更を通じた租税回避への対処,5.資産課税のための納税者番号制度の利用,6.オフショア自主開示制度導入の背景とその効果の6点を主に尋ねた。ヒアリング調査の結果は,会計検査院の海外行政実態調査報告書としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自営業者の所得の過少申告割合の分析の査読付き英文学術雑誌への掲載,遺産相続が相続人の労働供給に与える影響の分析の学会報告と査読付き英文学術雑誌への投稿・改訂,富裕層の海外取引を用いた脱税・租税回避についてのデータ分析と海外の税務当局へのヒアリング調査と報告書作成を行えたため,おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
遺産相続が相続人の労働供給に与える影響についての論文の改訂を進め,査読付き英文学術雑誌に再投稿する。また,富裕層の海外取引を用いた脱税・租税回避についての分析結果を論文としてまとめ,査読付き学術雑誌に投稿する。さらに,2015年の相続税増税が贈与行動に与えた影響の分析を個票データに基づいて行い,英語論文としてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
多くの学会や研究会がオンラインで開催された他,共同研究者との研究打ち合わせもすべてオンラインで行ったため,出張のための旅費を一切使用しなかったことが,次年度使用額が生じた最も大きな理由である。2022年度に投稿した英語論文の改訂や現在進行中の研究を英語論文としてまとめる際の英文校閲費に研究費を使用する予定である。
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