進化ゲーム理論を応用した生活保護におけるスティグマの形成の理論モデルを構築した。 長期均衡の静学的な特性を研究した。以下の点を明らかにした。また、生活保護制度をデザインするうえで非常に有益な政策的な含蓄を与えていると思われる。 (1)統計的差別スティグマモデルにおける長期安定均衡は2つしかないことが分かった。一つは、資格あるのに受給者もセロになると同時に、不正受給者もゼロになる均衡。もう一つは、一つは、資格あるのに受給者も全員が生活保護の給付を受けろると同時に、不正受給者がかんりの数になる均衡。(2)納税者の怒りモデルにおける長期安定均衡は1つしかないことが分かった。その均衡において、資格あるのに受給者および不正受給者もゼロでなく、ある程度の人数が存在する。(3)生活保護の給付水準の増加は、不正受給者数を増加させる。他方、受給の際の露出度の増加および賃金の増加は、不正受給者数を減少させる。 (4)資格あるのに受給者数は上記のいかなるパラメーターの変化も影響をうけない。これは、資格あるのに受給者数は0%かあるいは100%という値をとるので、どのような政策を実施していも、長期では、その値に戻るからであると考えられる。
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