研究課題/領域番号 |
19K01714
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐口 和郎 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 名誉教授 (10170656)
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研究分担者 |
金井 郁 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (70511442)
橋本 由紀 (長澤由紀) 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 研究員 (30707675)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ライド・ヘイリング事業 / プラットフォーム・ビジネス / 既存タクシー産業 / 雇用者性と非雇用者性 / インディペンデント・コントラクター / 地域公共交通 / 新型コロナ問題 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、新型コロナ問題の影響により、研究の主軸である国内調査及び海外調査を実施できないという制約の中で、シェアリング・エコノミーの日米比較論文(英文)の彫琢を優先し、その公刊を実現した。 次に、リモートでのタクシー労組へのインタビュウでは、「新型コロナ問題が日本のタクシー産業での働き方に与えた影響」に論点を絞り、新型コロナ問題の直接的な影響(数量を含め)と、従来から当該産業が抱える脆弱性がより明確な形で顕在化していることを確認できた。前者では、営業収入・実働率の激減(特に4,5月での「夜の街」関連と観光関連)が顕著であったが、後者では求職者の激減が観察された。後者の問題については、タクシー産業では需要減が直接収入に反映する歩合給が主であることが影響しており、乗務員の「非雇用労働者性」の側面がネガティブに効いていると考えられる。一方、人流を担うエッセンシャル・ワーカーとして、「雇用労働者性」が強まる趨勢は確認できなかった。 文献研究では、海外(特に米英)での新型コロナ問題の展開が、Uberの戦略の転換を促しつつあることが明らかになった。新型コロナ問題の影響で、ドライバーは需要と収入が大幅に減少しているだけでなく、感染の脅威にさらされている。この中での、ドライバーによる諸手当や有給の休暇への要求の高まりをライド・ヘイリング事業(例えばUber)側も無視することはできなくなっており、それらが相当程度受け入れてきている(ロンドン、アメリカ西海岸)。また、このような趨勢は、イギリスにおいて、Uberのドライバーを雇用労働者とインディペンデント・コントラクターとの中間のカテゴリイと位置付ける司法判断が下されてきていることと関係しているとも考えられる。 いずれにせよ、新型コロナ問題が、ライド・ヘイリング事業、既存のタクシー産業に複雑な影響を与えつつあることは確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ問題の影響によって、令和2年度の研究推進方策として予定していた、大都市のタクシー会社と地方のタクシー会社の乗務員の働き方の比較をインタビュウ調査によって行う計画を実現できなかった。 次に、韓国・台湾における予備調査を通じて、東アジアにおけるライド・ヘイリング事業と既存タクシー事業との関係についての比較研究を進めるという計画も実現できなかった。 さらに、国内調査から見出される新しい論点を取り込んで進める予定だった計量分析も、一部を除いて進めることができなかった。 なお、新型コロナ問題が、ライド・ヘイリング事業にも既存タクシー事業にも様々な影響を与えていること自体は一定程度把握できた。だが、それがプラットフォームビジネス全体の動向やそこでの働き方にどのような影響を及ぼしているのかに関しては、こうした影響が一時的なものかどうかも含めて、考察はごく初歩的な段階にとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、令和2年度から開始した新型コロナ問題のライド・ヘイリング事業と既存タクシー事業への影響に関する研究を、タクシー労使へのインタビュウ等で進展させる。また、「新型コロナ問題のギグエコノミーへの影響」に視野を広げ、論点を深化させる。この領域については、今年度の社会政策学会の分科会での発表を予定している。 また、令和2年度に全く実施できなかった、タクシー労使への国内調査、具体的には首都圏等の大都市部と地方(中核都市周辺と過疎地)での調査を行う。中心となる論点は、雇用者性・非雇用者性、地域貢献、であるが、新型コロナ問題の影響を現場で確認することも目的とする。 さらに、令和2年度に実施できなかった東アジア調査についても、今年度の後半を目途に実施することを計画しているが、ここでも新型コロナ問題の影響(特に韓国)も併せて調査する。 また、上記の調査で新たに浮かび上がる論点に関連して、2018年に実施したアンケート調査の結果と賃金構造基本統計調査(個票)を活用しつつ、その検討作業を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ問題の影響で、予定していたタクシー労使への国内調査(大都市圏と地方都市、過疎地域)を実施することができなかった。また、ライドヘイリング事業と既存タクシー事業との関係の国際比較研究の一環として予定していた韓国及び台湾での海外調査を実施できなかった。これらの理由により次年度使用額が生じた。 本年度は、「今後の研究の推進方策」に基づき、元々計画していた国内調査、海外調査を着実に実行する。これに加えて、「新型コロナ問題がライドヘイリング事業と既存タクシー事業にどのような影響を与えているのか」という新たなテーマの研究の一環として、対象を大幅に広げる形で国内調査を実施していく。
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