研究課題/領域番号 |
19K01717
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
高松 慶裕 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (90454016)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 最適所得税 / 就業選択 / 年齢に基づく税制・再分配政策 / 非自発的失業 / 失業給付 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,政府が就労可能な低所得者にどのように再分配すればよいのかという問題を理論的に検討することである。グローバル化の進展や非正規労働など雇用形態が多様化する一方,少子高齢化の進展で労働人口が減少する中で,低所得者向けの所得課税・再分配政策を再考する必要がある。そこで本研究では,家計の労働供給行動として就業選択行動を採用した最適所得税モデルを構築し,誘因両立的な所得再分配政策を提示するための理論的分析を行う。 令和元年度は,労働供給行動として就業の選択を採用した最適所得税の静学的モデルと動学的モデルの両方について下記のように検討した。 1. 家計が異質な労働生産性と労働選好を持ち,さらにその両方にショックがある2期間モデルの下で,年齢に依存した労働所得税を検討した。定性的に年齢に依存した最適所得税(参加税)ルールを導出するとともに,シミュレーション分析により,最適参加税率は年齢に依存し,若年低所得層に負の参加税(賃金補助金)を設定することが望ましいことを明らかにした。この結果をまとめた論文(片岡孝夫氏との共著)を,Journal of Public Economic Theoryへ投稿し,掲載が確定している。また,年齢や世代に基づいた課税・再分配政策の研究について概観したサーベイ論文を執筆し,『証券レビュー』に掲載された。 2. 労働需要側を考慮するために,非自発的失業者と自発的失業者の両方が存在するモデルで失業給付の役割を検討した。シミュレーション結果によれば,失業給付と給付付き税額控除は同時に用いる必要がないことが示されている。この結果は,国際財政学会 (IIPF)等で発表した。今後,海外雑誌への掲載に向けて改訂作業を進め,論文を投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は,動学的就業選択モデルにおける年齢に基づく課税・再分配の役割について明らかにした論文が国際ジャーナルへ掲載確定し,また非自発的失業を考慮したモデルにおいても給付付き税額控除と失業給付の役割分担について,一定程度明らかにすることができ,国際学会での発表も行うことができた。このように当初計画に対しておおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度も,令和元年度に引き続き労働所得税の下での誘因両立的な制度設計の研究を行う。特に,非自発的失業者が存在する中での,失業給付と給付付き税額控除の役割分担については,論文を改訂し,研究会等で報告するとともに,ジャーナル投稿に向けて作業を進める。 また,動学的就業選択モデルにおいては,資産分布を内生化したモデルや経歴に依存した政策との比較についても考察する。
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