研究実績の概要 |
2019年度から2022年度の全期間に亘り、研究計画中の「課題1」、「日本の政府財政に関する持続可能性の検証」(Bohn (1998, 2008)の財政反応関数を利用)を実施した。その具体的な内容は次のとおりである。 (1) パネルデータを用いて、日本の都道府県財政の持続可能性に関する分析を実施した(分析期間1974-2016年度)。結果、どの都道府県も基本的には持続可能な財政運営を実施していること、中央政府からの財政移転は都道府県財政の健全化に寄与する等の知見を得た。 (2) 日本の各政府(一般政府、中央政府、地方政府(総体)、社会保障基金(総体))の持続可能性を、財政運営の時系列変化を踏まえて、分析した(分析期間1976Q2-2020Q1)。ただし、分析の頑健性を考慮し、分析には、(a)AR(1) error model(もしくはOrdinary least squares model)、(b)Markov switching model、(c)Least-squares with breakpoints model、(d)State-space model with the Kalman filterの4つのモデルを用いた。結果、中央政府、地方政府、社会保障基金自体は分析対象期間中に幾度か持続可能な財政運営を試みているが、総体としての一般政府で観た場合には、1990年代の中盤以降持続可能な財政運営が実施できていないこと、分析手法としてはモデル(b)が優れていること等の知見を得た。また、Discrete threshold regression model を用いた補助分析により、財政運営姿勢を変化させる要因も明らかにした。 なお、上記課題1(2)分析の精緻化等に時間が取られたため、研究計画中の「課題2」の分析に関しては、分析の基本計画の構築のみにとどまった。
|