研究課題/領域番号 |
19K01722
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
江口 允崇 駒澤大学, 経済学部, 准教授 (40600507)
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研究分担者 |
岡野 衛士 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20406713)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 財政政策 / 財政乗数 / ゼロ金利 |
研究実績の概要 |
2021年度は、まず前年度に構築した財政政策と金融政策のレジームスイッチを導入したDSGEモデルを日本の1973年から1998年のデータを用いて推定を行った。結果として、財政政策は1970年代後半とバブル期(1980年代後半)には相対的にactiveである一方、それ以外の時期にはpassiveであることが示された。一方、金融政策も1970年代後半とバブル期(1980年代後半と1990年代前半)には相対的にpassiveであり、それ以外の時期にはactiveであることが示された。ただし、レジームが違っていても、財政乗数にはほとんど差はなかった。この理由は、日本のデータでは、金融政策がpassiveなレジームであったとしても、テイラールールの係数は0.9と大きいものであるために、activeな場合とほとんど結果が変わらないことにある。この結果に基づき、財政政策と金融政策のパラメーターの組み合わせによってどのように財政乗数が変わるかをグリッドサーチによって示した。 また、昨年度の今後の方針で述べたように、Gali (2020)で提示された閉鎖経済モデルにおけるマネーファイナンスによる財政政策の分析を、開放経済モデルに拡張した分析を行い、Dynare Working Papersに公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は、デフォルトリスクが存在する場合の最適な財政・金融政策について分析することであり、その目的自体は既に一昨年度におおむね達成されて いると言える。昨年度と今年度はコロナという未曾有の危機に伴う社会情勢の変化に促されてやや研究の方向性を変えたが、デフォルトの状態というのは一つのレジームとして組み込むことができるために、レジームスイッチを伴うDSGEモデルの技術はデフォルトの分析にも流用可能である。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、ゼロ金利制約を伴う中規模DSGEモデルにより、日本のゼロ金利期の財政乗数の推定を行っている。ゼロ金利制約をDSGEモデルに導入する場合、非線形のモデルを扱う必要性が生じる。非線形のDSGEモデルの推定法としては、射影法と粒子フィルタの組み合わせを用いることが一般的であるが、本研究では、Guerrieri and Iacoviello (2015)で提示されたOccasionally Binding Constraint (Occbin)の解法アルゴリズムと、Giovannini, Pfeiffer, and Ratto (2021)で示されたpiecewise Kalman filter(PKF)を用いる。従来の射影法と粒子フィルタの組み合わせでは、大きなモデルを推定することは困難であったが、OccbinとPKFを組み合わせることで、Smets and Woutersタイプの中規模のDSGEモデルを推定することが可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナにより国際学会が中止ないしはオンライン開催になったため。
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