2022年度は、前年度の「今後の研究の推進方策」に従い、ゼロ金利制約を伴うDSGEモデルによる財政乗数の推定に主に取り組んだ。具体的には、Guerrieri and Iacoviello (2017)で示されたInversion Filter(IF)の手法を用いて、区分線形化を行なった小規模ニューケインジアンモデルの推定作業を行なった。現在は中規模ニューケインジアンモデルにモデルを拡張し、日本のデータを使った推定作業を行なっている。 また、昨年度にDynare Working Paperに刊行した"The Effects of Money-financed Fiscal Stimulus in a Small Open Economy"を国内外の学会で報告し、査読付きの英文雑誌に投稿した。現在R&Rとなっている。 さらに、大阪大学の敦賀貴之教授と二羽秀和助教と共同で、"Should the fiscal authority avoid implementation lag?"という論文を執筆し、ISER Discussion Paperに刊行した。現在査読付きの英文雑誌に投稿中である。この論文では、平常時には財政政策の実施ラグがあると財政乗数が小さくなるが、ゼロ金利の状況では実施ラグがある方がむしろ財政乗数を大きくしうることをシンプルなニューケインジアンモデルによって示している。 このほか、明治大学の畑農鋭矢教授と『財政の持続可能性とは何か?―横断性条件, ドーマー条件,物価水準の財政理論―』という論文を共著で執筆し、フィナンシャル・レビュー誌に掲載した。
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