本研究の基本的な目標は、戦前や戦後の道府県の自殺統計を整備した上で、財政支出の変化が自殺率に与えた効果を推定することである。 最終年度は、これまでの研究成果のとりまとめ、追加分析の実施、学会での研究成果の公表、論文執筆を行った。まず、戦前期の財政支出の変化が道府県の自殺率に与えた効果の検証を論文に取りまとめた。この論文は、これまでの学会での研究報告を踏まえた内容である。次に、研究分担者が5月28日に実施された日本経済学会と8月8日に開催された国際学会(2022 Asian Meeting of the Econometric Society in East and South-East Asia)にて、本研究の成果を報告した。学会での研究報告に対する他の研究者からのコメントを踏まえて、論文の内容を改善するために必要な作業や論点を分担者とともに検討した。 最終年度は財政支出が自殺率に与える効果のメカニズムを掘り下げる研究を行った。所得などの経済変数、離婚率、小作争議件数、乳児死亡率などの変数を用いて、財政支出が自殺率に与える効果のメカニズムの分析をした。さらに、職業別自殺統計を収集し、データにまとめる作業を行った。この統計を用いて、有業者・無業者の自殺者数、一産業、二次産業、三次産業の自殺者数などのデータを作成した。これらのデータを用いた追加分析を行い、財政支出の変化が自殺率に与えた効果をより詳細に分析することができた。以上の分析結果を投稿用論文として整理する作業を行った。最新の研究内容は2023年6月4日開催の日本地方財政学会で報告をする予定である。 研究期間全体を通じて、戦前期の自殺率の推移を記述統計で分析した研究と戦前期の財政支出の変化の地域差を利用して、財政支出が自殺率に与えた効果を推定する研究を行った。
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