本研究は、子どものいる労働者に対する政策介入の効果の検証を目的に行った。また、出産後の女性労働者は離職することが多いことが知られているため、離職者の再就職を支援する離職者訓練の効果に関する分析も、昨年度に引き続き本研究の一環として実施した。 昨年度までに政策効果に関する回帰分析を行うことで一定の分析結果を得られていたが、政策・制度の歴史的背景やそのほかの政策との関連性等の調査が不十分であった。そのため、2022年度は、政策・制度に関する文献調査を行うとともに、歴史的経緯やほかの政策との関連性を担当官庁の当時の政策担当者に聞き取り調査を行った。その知見を活かす形で、因果識別のための計量分析のフレームワークを精緻化しさらなる計量分析を行った。今後、これらの結果に基づいて論文の執筆をさらに進め、ディスカッションペーパーとしての公表を予定しているところである。 また、離職者の再就職を支援する離職者訓練の効果に関連する研究も、本研究の一環として2022年度も引き続き実施した。離職者訓練は男性よりも女性により大きな効果があることを明らかにした論文が査読を経て国際学術雑誌に掲載されたが、それとは別に、海外の研究動向を紹介するとともに、日本における介入群・対照群をともなう準実験的な分析フレームワークを用いた離職者訓練の効果推定の研究を概観したうえで、公共職業訓練の効果推定を今後推進していくために必要なことをとりまとめたサーベイ論文を日本語で発表した。
|