研究課題/領域番号 |
19K01726
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小西 秀樹 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (50225471)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 公務員CEO / 賃金交渉 / 政治経済学 / 公共選択 |
研究実績の概要 |
公務員のトップ(公務員CEOと呼ぶ)が有権者の代表と賃金およびサービスの価格について交渉するモデルを構築し、企業の経営者と交渉する場合に比べると公務員の賃金は高く、サービスの価格は安くなることを示した。しかし、この結果は非現実的であり、むしろ民間CEOの方が公務員CEOよりもはるかに高い所得を得ている。そこで、2つの要素をモデルに導入した。1つは公的なサービスについては設定できる価格の上限がある場合であり、もう1つは賃金交渉を行う有権者の代表(賃金交渉者と呼ぶ)と価格設定を行う有権者の代表(価格設定者と呼ぶ)が異なる場合である。また、公的企業の場合には課税によって賃金支払いを補填するケースもあり得るため、課税の厚生コストも考慮した。以上のモデルによって、次のような命題が導かれた。(1)上限価格が十分に低く課税の厚生コストが十分に大きいならば、公務員CEOの賃金は民間CEOよりも低くなる、(2)価格設定者の所得が賃金交渉者の所得よりも十分に低ければ、公務員CEOの賃金は民間CEOよりも低くなる、さらに(2)のケースでは、(3)課税の厚生コストと公務員CEOの賃金の間には逆U字型の関係があり、課税の厚生コストが上昇すると公務員CEOの賃金も上昇するケースがある。また、どのような個人が賃金交渉者や価格設定者に選出されるかという問題を考察するために、有権者が立候補して選挙で賃金交渉者や価格設定者が選ばれるステージを導入し、戦略的委任の問題を考察した。このゲームの解を構造誘導均衡(Structure-induced equilibrium)によるものとしたとき、(4)有権者間で所得分配が不平等であるほど、公務員CEOの賃金は民間CEOよりも低くなる、ことが明らかになった。これらの研究成果はディスカッションペーパーとしてまとめ、オーストラリア公共選択学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに論文が完成し、国際学会でも報告、国際ジャーナルへの投稿を行った。
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今後の研究の推進方策 |
できるだけ多くの学会やカンファレンスで報告してフィードバックを得つつ、査読付き国際ジャーナルでの論文の公刊を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型ウィルス感染症の蔓延のため3月に予定していた国内出張を取りやめたため,次年度使用額が生じた.翌年度の旅費に追加して使用する予定である.
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