わが国における児童等の未成年期における健康格差の実情の分析および医療費助成制度との関係性の把握は、小児保健医療において喫緊の学術的課題である。本研究では、わが国の児童等への医療費助成の地域差を明らかにし健康格差の実態を解明すること目指した。人口動態統計、診療報酬明細書データ、小児慢性特定疾病登録データ等を利用し、把握の困難な小児期における慢性疾病の有病率の試算を行うとともに、市区町村ごとに異なる児童等に対する乳幼児・こども医療費助成の差異と児童等の未成年期における健康格差との関係性を明らかにすることを目的とした。 県国民健康保険診療報酬明細書データを利用し、わが国で初めて小児慢性特定疾病の公費負担状況について分析を行った。県国保の20歳未満人口のカバー率は15-19%であり、1型糖尿病では60-80%、胆道閉鎖症では60%前後、単心室症では50-60%、成長ホルモン分泌不全性低身長症では50-60%、白血病では40-50%程度の利用率であると推察された。また小児慢性特定疾病以外の医療費助成としては、子ども医療費助成の利用が最も多く、これら市町村事業の単独利用が小児慢性特定疾病の利用率に影響していることを見出した。この結果から、子ども医療費助成は地域差が非常に大きく、一部の地域では医療費の自己負担額がゼロになっていることから、居住地域において享受できる助成内容に差異があることが予想された。
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