研究実績の概要 |
本研究課題は国内地域経済が抱える少子高齢化・人口減少といった根本的かつ構造的な課題が深刻化するなかで, 国内地域経済の持続的発展に資する地域金融機関のコーポレート・ガバナンスのあり方を主にミクロ計量分析の手法によって実証的に明らかにすることを目的とする。本研究課題の独自性は, (i) 役員兼任, 多様性および適正規模といった新たな観点から地域金融機関の取締役会・理事会の実効性を評価すること, (ii) 役員兼任を介した地域経済における企業間ネットワークの定量化による外部役員の独立性の判断など, 数理社会学の一分野である「社会ネットワーク論」の知見を援用した学際的な分析手法の採用, (iii) 中小・零細企業金融の主力を担いながら, これまで十分な学術的関心が寄せられてこなかった協同組織形態をとる信金・信組のガバナンス・メカニズムとその実効性の解明を行うことなどにある。 研究計画初年度にあたる 2019 年度は, 主に (i) および (ii) に重点的に取り組んだ。具体的には, 岡山県内に本社を置く約 3,000 社の役員情報をもとに, ローカル企業同士が形成する役員兼任ネットワークの構造を明らかにするとともに, ネットワークにおける中小・地域金融機関の中心性を評価した。当該研究成果については地域・中小企業金融研究の第一線で活躍する研究者が集う「第 13 回地域金融コンファランス」(長野県立大学)において口頭報告を行い, 出席者とのあいだで活発な意見交換を行った。
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