研究課題/領域番号 |
19K01739
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
中村 周史 中央大学, 総合政策学部, 准教授 (70612571)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 移民送金 / 国際金融 / 小国開放経済 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年急激に成長し、新興国経済にとって大きな影響を持つまでになった国外労働者の本国への送金(移民の国際送金)と国際金融市場における投資資金調達という、異なる性質を持つ二つの大きな国際資金フローが生みだす政策当局にとっての新しいジレンマに焦点を当て、新興国経済の安定化に資する効率的で実行可能な為替政策運営の示唆を得ることを目的としている。 本年度は、前年度までに構築した経済移民コストを考慮した動学の小国開放経済モデルによるシミュレーションと、モデルの一部仮定に関する再検討を行った。ここまでに構築した動学モデルは、他の労働市場を選択する、つまり、移民(コストを伴う)とそれによる本国送金を選択することが可能なモデルを考え、為替と2つの国際資金フロー(移民送金と外貨建て資金調達)、為替政策運営の関係を考えてきた。しかし、移民送金がマクロ経済に対して影響する強さは、自国金融市場の発展度に依存する(Giuliano and Ruiz-Arranz,2009)という指摘を受け、この関係が現在の国際経済環境でも存在するかを確認するため、実証研究を実施した。経済成長率を被説明変数、説明変数として国際送金比率(対GDP)や金融発展の代理変数(国内信用比率など)、それらの交差項を用いて固定効果モデルで分析したところ、国際送金比率の影響の強さは金融発展の程度に依存していることが確認された。この結果を受け、こうした関係がモデルに反映されるための拡張を検討しているところである。ただし、この拡張は後述の理由により年度途中で停止しており、今後に持ち越されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
大学・高専機能強化支援事業で選定された新学部設置に関して、設立検討委員として選出されたことで、夏以降に十分なエフォートを確保することが困難となった。結果、学内の研究助成課と相談のうえ、当該年度に計画通り遂行することを断念し、期間再延長を行った。
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今後の研究の推進方策 |
前掲の通り、金融発展度と国際移民送金の関係を検証できるようなモデル修正を検討し、厚生分析を行ったうえで、これまでの研究結果の総括に向けた作業を実施する。また、その研究成果を論文にまとめ、学術誌への投稿・掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学・高専機能強化支援事業で選定された新学部設置に関して、設立検討委員として選出されたことで、夏以降に十分なエフォートを確保することが困難となり、出張計画などがなくなったため。
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