• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

貨幣の価値尺度の機能からみた最適通貨圏の決定メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 19K01740
研究機関日本大学

研究代表者

豊福 建太  日本大学, 経済学部, 教授 (60401717)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード金融危機 / 資産同質化
研究実績の概要

本年度は、金融機関における資産の同質化(asset commonality)の現象に関する基本的なメカニズムの解明を行なった。そこでは、金融機関と投資家からなるモデルにおいて、金融機関が企業特殊的な投資と各銀行が共通にアクセスできる投資の2つに投資をできる環境を考えた。そして、金融機関の収益の変動が小さいと予測される時には、各金融機関は企業特殊的かつ効率的な投資を行うものの、収益の変動が大きいと予想される時には、各銀行が共通にアクセスできる投資を行うことを示した。また、寡占的な状況を考え、金融機関の数が少ない時ほど、後者の投資を行うようになることを示した。この結果より、金融機関における資産の同質化において、各金融機関は共通にアクセスできる投資を行うことで、暗黙的にリスク分担を行なっていることを示した。これは、各金融機関は収益の変動が小さいときは、それぞれにリスク分散を行うため、さまざまな資産に投資を行うものの、収益の変動が大きくなるほど、また他の金融機関との競争がそれほど激しく無くなるほど、リスク分担のインセンティブが高まるため、資産の同質化が起こりやすくなることを示した。これらの結論を、数値計算を用いてシミュレーションを行い、導出した均衡の特徴を浮き彫りにした。
本研究は、``Risk sharing and Asset Commonality in the Financial sector” Working paper series, 21-03, Research Institute of Economic Science, College of Economics, Nihon Universityとしてまとめており、現在海外査読誌に投稿中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、既に資産がもつリスク分担機能に関して二つの論文をまとめることができている。一つ目は、``Unit of Account, Sovereign Debt and Optimal Currency Area" (Working paper series, 19-03, Research Institute of Economic Science, College of Economics, Nihon University)であり、貨幣の価値尺度の観点から、貨幣のリスクシェアリング機能と既存債務の返済負担のトレードオフから最適通貨圏が形成されることを示した。現在、本研究をより精緻化した論文を海外査読誌lに投稿中である。次に``Risk sharing and Asset Commonality in the Financial sector” Working paper series, 21-03, Research Institute of Economic Science, College of Economics, Nihon Universityとしてまとめており、現在海外査読誌に投稿中である。

今後の研究の推進方策

今後は、これまでの研究を拡張し、さらに資産のもつリスク分担機能から引きおこされる金融危機のメカニズムの解明などを行なっていきたいと考えている。これまでに構築してきたモデルに対し、インターバンク市場を考慮したモデルを作り、銀行が流動性資産を保有し、企業特殊的な融資を行うか、各銀行が共通にアクセスできる一般的な融資を行うかの選択をする状況を考える。この際、銀行が直面する収益の変動が小さいと予想される時、各銀行はリスク分散を行うと同時に、流動性資産を保有してインターバンク市場を通じた銀行間のリスク分担を行うが、収益の変動が大きくなると予想される時、各銀行は暗黙のうちにリスク分担を行う手段として各銀行がアクセスできる一般的な融資を行うという資産の同質化が生じることを示す。その結果、金融システム自体がショックに脆弱なものとなり、金融危機が引き起こされやすくなることを示す。
本研究に関しては、既にモデル構築は終了しており、今後は数値計算などを用いてさまざまな結論を見出していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍のために予定していた海外学会がキャンセルになったりしたため、旅費として計上していた費用を使うことができなかったため。今後の使用計画としては、今年度終わり頃に海外学会に行けるようになれば、旅費として計上する。また、数値計算でのシミュレーション分析を行う際に、より処理速度の速いパソコンの必要性が出る可能性があるため、パソコンの購入に充てる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] Risk Sharing, Asset Commonality in the Financial Sector2021

    • 著者名/発表者名
      Kenta Toyofuku
    • 雑誌名

      Working paper series, 21-03, Research Institute of Economic Science, College of Economics, Nihon University

      巻: - ページ: -

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi