研究実績の概要 |
本年度は、金融機関における資産の同質化(asset commonality)の現象に関する基本的なメカニズムの解明を行なった。そこでは、金融機関と投資家からなるモデルにおいて、金融機関が企業特殊的な投資と各銀行が共通にアクセスできる投資の2つに投資をできる環境を考えた。そして、金融機関の収益の変動が小さいと予測される時には、各金融機関は企業特殊的かつ効率的な投資を行うものの、収益の変動が大きいと予想される時には、各銀行が共通にアクセスできる投資を行うことを示した。また、寡占的な状況を考え、金融機関の数が少ない時ほど、後者の投資を行うようになることを示した。この結果より、金融機関における資産の同質化において、各金融機関は共通にアクセスできる投資を行うことで、暗黙的にリスク分担を行なっていることを示した。これは、各金融機関は収益の変動が小さいときは、それぞれにリスク分散を行うため、さまざまな資産に投資を行うものの、収益の変動が大きくなるほど、また他の金融機関との競争がそれほど激しく無くなるほど、リスク分担のインセンティブが高まるため、資産の同質化が起こりやすくなることを示した。これらの結論を、数値計算を用いてシミュレーションを行い、導出した均衡の特徴を浮き彫りにした。 本研究は、``Risk sharing and Asset Commonality in the Financial sector” Working paper series, 21-03, Research Institute of Economic Science, College of Economics, Nihon Universityとしてまとめており、現在海外査読誌に投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、既に資産がもつリスク分担機能に関して二つの論文をまとめることができている。一つ目は、``Unit of Account, Sovereign Debt and Optimal Currency Area" (Working paper series, 19-03, Research Institute of Economic Science, College of Economics, Nihon University)であり、貨幣の価値尺度の観点から、貨幣のリスクシェアリング機能と既存債務の返済負担のトレードオフから最適通貨圏が形成されることを示した。現在、本研究をより精緻化した論文を海外査読誌lに投稿中である。次に``Risk sharing and Asset Commonality in the Financial sector” Working paper series, 21-03, Research Institute of Economic Science, College of Economics, Nihon Universityとしてまとめており、現在海外査読誌に投稿中である。
|