研究課題/領域番号 |
19K01745
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
西村 佳子 京都産業大学, 経済学部, 教授 (90319442)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パッシブ・ファンド / ベンチマーク / 確定拠出年金 |
研究実績の概要 |
本年度は、2019年度に作成したデータをもとに、企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金の運用資産メニューに採用されているパッシブ・ファンドに焦点を当て、企業型確定拠出年金を提供する企業や、個人型確定拠出年金の運営管理機関が、「多種多様なパッシブ・ファンドの中からより優れたパッシブ・ファンドを選んでいるか」という問題を明らかにするための予備的な分析を実施した。 予備的な分析では、「優れたパッシブ・ファンドとはベンチマークとなる指標との連動性が高い投資信託である」という前提の下で、パッシブ・ファンドとベンチマークとの連動性について分析し、(a)パッシブ・ファンドはどの程度ベンチマークと連動しているか、(b)TOPIXおよび日経225に連動するインデックス・ファンド78本について、どのような条件下で(a)の乖離が大きくなるか、について分析を行った。その結果、(a)については、インデックス・ファンドはベンチマークにかなり正確に連動しているが、短期間ではあるが大きく乖離するケースがある、(b)については、ファンドの決算期と投資信託とベンチマークとの乖離の関係について先行研究とは異なり、ファンドの決算期でない3月と9月に乖離が大きくなることがわかった。今後、より詳細な分析を行う必要がある。本研究成果については、生活経済学会中四国部会(2020年11月21日Web開催)にて報告を行った。 今後の課題としては、手数料や信託報酬の引き去りのタイミングについて関係者にインタビューを行い、不足しているデータを作成して「多種多様なパッシブ・ファンドの中からより優れたパッシブ・ファンドを選んでいるか」という問いに対して結論を導くための分析を行うことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は感染症による移動制限や、インタビューが必要な企業における就労体制の変化により、研究に支障が出た。具体的には、予備的な分析で明るみになったパズルについてさらに分析を進めるためには、ファンドの手数料や信託報酬の引き去りのタイミングについて企業の関係者にインタビューを行い、追加のデータを作成することが不可欠であったが、2020年度は、企業の方から必要な情報を収集することが難しく、その後研究を展開することが難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針に変化はなく、(i)年金運用のために設計された投資信託と一般の投資信託の特性の違い、(ii)投資信託の資産規模と運用成績の関係、(iii)運営管理機関・金融機関・投資信託の運用会社の間の資本関係や取引関係、に注目した分析を行う予定である。従来のパッシブ・ファンドとアクティブ・ファンドという分類だけでなく、パッシブ・ファンドの中で優れたものとそうでないもの、という視点を導入して、投資信託の特性の違いが、運営管理機関のファンド選択にどのような影響を与えるのかについて明らかにしたい。ただし、感染症の蔓延が続く場合は、ファンドの手数料や信託報酬の引き去りのタイミングについて企業の関係者にインタビューを行うことが難しく、詳細な情報の収集ができないことから、研究に遅延が出る可能性もある。
年金運用のために設計された投資信託の場合、一般の投資信託とは異なり、最初に大きな投資が行われて一定の規模を維持する(または運用開始後何年か経過後に徐々に残高が減少する)のではなく、コンスタントに資金が流入するものが多く、運用開始後しばらくは運用額が少ない投資信託が多いと考えられる。そのような投資信託の特性の違いが、運営管理機関のファンド選択にどのような影響を与えるのかについて明らかにするつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症の蔓延により、予定していたインタビューが行えなかったため旅費の使用がなく余剰が発生した半面、オンライン開催の学会参加のための予定外の費用がかかった。収支を計算すると以上の理由により、若干の次年度使用額が生じた。 次年度使用額については、インタビュー等を実施して新たに得た情報をデータ化するときのアルバイト雇用に必要な費用の一部として使用する予定である。
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