今年度の研究では、コロナの影響により投資信託の手数料(委託・販売・受託)に関する運用会社等へのヒアリング調査ができなかったため、確定拠出年金加入者の資産運用状況について、厚生労働省が公開する「運営管理機関登録業者一覧」および、運営管理機関連絡協議会による「確定拠出年金統計資料」等のデータを用いて、個人型確定拠出年金・企業型確定拠出年金の両方について、世代別の運用資産選択状況と運用利回りに関するデータの整理を行い結果をまとめた。企業型866本、個人型732本の投資信託(うち企業型・個人型の両方に採用されている投資信託が400本)を対象に分析を行った結果明らかになったことは、(1)国内株式・グローバル株式に投資するパッシブ・ファンドへの資金流入額が多く収益率も高いこと、一方で(2)運用成績がここ数年芳しくない国内債券ファンドに年間100億円の資金が流入しており、今後も苦戦が予想されるが投資額が減っていないこと、(3)手数料率が高く運用成績も有利とはいえないアクティブ・ファンドへの支持が高いこと、(4)海外では確定拠出年金の運用で人気があるターゲットイヤー・ファンドへの資金流入額が少なく途中償還されている例が複数あること、である。さらに世代別に見ると、加入者が自発的に加入手続きを行う個人型確定拠出年金では、世代が低くなるにつれて外国株式パッシブやバランス・パッシブに投資する比率が高いが、受け身で加入する加入者が多いと思われる企業型では、逆に20代・30代の世代が低い加入者が、預金や保険商品に投資する割合が高いことがわかった。若年世代の金融リテラシーの向上だけでなく、ターゲットイヤー・ファンドの普及など、若年層の効果的な年金運用を後押しする施策が必要である。
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