最終年度における研究実績の概要は下記の2点である。 1つ目は,2000年以降,日本の株式市場のみならず世界各国の株式市場に大きな影響を与えた「COVID-19」という非常に大きな外的要因に着目し,株式市場にどのような影響を与えるかについて,各企業の現金保有に着目した研究である。その際に,「COVID-19」は予測することの出来なかった外的要因であると考え,比較的近い時期に発生した外的要因で,企業や投資家にとって予測することの出来たと考えられる「消費増税」の影響と比較することで,外的要因が株式市場に与える影響について考察した。何回かのタイトルの変更を経て,Stock price reactions to corporate cash holdings in mitigating predictable and unpredictable negative shocks,というタイトルで公開し,学術誌“Pacific-Basin Finance Journal”のvol.79に掲載された。
2つ目は現在進行中の研究として,日本銀行による非伝統的金融政策の1つであるETF購入プログラムが上場企業のガバナンスに与える影響について考察を行っている。本年度は上場企業のガバナンスを評価する方法に関するサーベイとガバナンス指数の作成を行ってきた。ETF購入プログラムにより上場企業の株主構成が変化したことが,企業のガバナンスにどのような影響を与えるのかを考察することは企業のコーポレートガバナンスの視点からも金融政策の効果を確認する観点からも重要である。本研究については,2024年度秋の学会で報告を予定している。
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