研究課題/領域番号 |
19K01749
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研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
鈴木 泰 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 教授 (00350752)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イスラーム金融 / イスラーム銀行 / シャリーア遵守 / ムラバハ / インドネシア / バングラデシュ / Raf-al-haraj / マレーシア |
研究実績の概要 |
今年度は、主として、次の3点の研究活動を行った。(1)本研究の中で明らかになってきた成果の一つとして、シャリーア(イスラーム法規範・倫理)遵守の原則だけでは、イスラーム銀行による搾取(利子制限法を超える高利に相当するプライシング)の可能性は否めないことを実証し、この原則に加えて「苦痛から解放」(Raf-al-haraj)原則がプライシングに反映されることが望まれることがイスラーム法学の見地からも導かれることをまとめた。この論文を、イスラーム金融では有数のSCCIジャーナルでもある、International Journal of Islamic and Middle Eastern Finance and Managementに投稿し、査読を受け、掲載された。 (2)インドネシアにおいて、国営イスラーム銀行の統合があり、統合に至る経緯と統合効果分析のためのデータ収集を現地の研究協力者の協力を得て行った。試行的に統合効果の計量的分析を進めた。 (3)この統合の背景には、インドネシアにおけるイスラーム銀行の市場浸透が著しく低いことがあり、なぜ、世界最大のイスラーム教徒を有する国において、イスラーム銀行の市場浸透が低いのかをマレーシアのイスラーム銀行との比較において分析した著作(Growth of Islamic Banking in Indonesia)をRoutledge社より出版した。イスラーム銀行を育成するための両国の政策の違いが、それぞれのイスラーム銀行の収益・財務体質に大きな影響を与えていることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナのため、現地調査が十分に進められていない。現地の研究協力者の協力を得て、データ収集は進めているが、インドネシアおよびマレーシアで予定していたリバース・ムラバハの法解釈を巡るシャリーア・アドバイザーへのインタビューは進められていない。バングラデシュのイスラーム銀行動向調査に関しては、現地の研究協力者の協力を得て、バーゼル規制(自己資本比率規制)強化のイスラーム銀行貸出動向、収益構造への影響に関するデータの入手および分析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナのパンデミックがイスラーム金融にどのような影響を与えているかの情報・意見交換するWebinarに招待されたり参加する機会が増えている。そうしたWebinarを通じ、得られる情報やデータもあり、新型コロナがどのようにイスラーム銀行の収益・財務構造に影響を与えているかを分析することを、本研究のスコープに加えていくことを検討している。イスラーム銀行は、通常商業銀行に比べて、貿易金融のポートフォリオが大きいことと、特に、バングラデシュのイスラーム銀行は、海外被仕向送金の取り扱いからの収益が大きいことが分析の結果わかってきている。コロナ禍により、国際貿易および海外からの送金が大きな影響を受けており、イスラーム銀行の耐性の実証分析を本研究に取り込んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、予定していた海外現地調査がペンディングとなっている。そのため、予定していた研究旅費の執行が遅れている。次年度の後半(2021年9月~2022年3月)では、サバティカルを予定しており、新型コロナの状況次第ではあるが、インドネシア・マレーシアでの現地調査を集中して実施したいと考えている。
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