研究課題/領域番号 |
19K01749
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研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
鈴木 泰 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 教授 (00350752)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イスラーム金融 / イスラーム銀行 / シャリーア法令遵守 / インドネシア / バングラデシュ / ムラバハ |
研究実績の概要 |
2021年度は、主として、次の3点の研究活動を行った。(1)本研究の中で収集してきたイスラーム銀行を中心としたバングラデシュの銀行の収益構造の変化、財務体質の変化に関するデータを解析することにより、COVID-19の世界的感染拡大がイスラーム銀行を含むバングラデシュの銀行経営にどのような影響を及ぼしつつあるのかを明らかにした論文をまとめた。この論文を、イスラーム金融では有数のScopus収録ジャーナルでもある、Journal of Islamic Accounting and Business Researchに投稿し、査読を受け、掲載された。 (2)また、本研究を通じて研究を進めてきたイスラーム銀行のガバナンス構造およびシャリーア法令順守制度の知見をもとに、イスラーム銀行を含むバングラデシュ銀行がバーゼル規制(自己資本比率規制)が強化されるに伴い、却って収益構造や財務体質が悪化しているジレンマについて分析を行った。この論文も、イスラーム金融では有数のScopus収録ジャーナルでもある、Journal of Islamic Accounting and Business Researchに投稿し、査読を受け、掲載された。 (3)上記2の研究をさらに展開させた著作(Implementation of Basel Accords in Bangladesh: A Case of Multiple Institutional Failures)をSpringer / Palgrave Macmillan社より出版した。イスラーム銀行が、バーゼル規制を維持するために、劣後ローンによる借入を増やし、よりリスクの高い貸付を行っている構造的ジレンマを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナのため、現地調査が十分に進められていない。現地の研究協力者の協力を得て、データ収集は進めているが、インドネシアおよびマレーシアで予定していたリバース・ムラバハの法解釈を巡るシャリーア・アドバイザーへのインタビューは進められていない。一方、最近時、イスラーム金融学界でも取り上げられる機会が増えているイスラーム金融のデジタル・トランスフォーメーション(DX化)【イスラーム・フィンテック】の現地セミナーにオンラインで参加することで、情報収集およびDX化に伴うイスラーム銀行の課題について研究を進めている。 加えて、日本のイスラーム学の創設に貢献した井筒俊彦氏のイスラーム分析手法(ヒルム[hilm]の概念の分析)を用い、イスラーム銀行の貸し手の権利の保護、リバース・ムラバハの法解釈を巡る議論について考察する論文を作成している。
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今後の研究の推進方策 |
イスラーム金融のデジタル・トランスフォーメーション(DX化)、いわゆる、イスラーム・フィンテックに関するセミナーや講演会に招待される機会が増えており、研究のスコープをDX化に広げることを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で、予定していた海外現地調査がペンディングとなっている。そのため、予定していた研究旅費の執行が遅れている。2022年度において、新型コロナの状況次第ではあるが、インドネシア・マレーシアでの現地調査を集中して実施したいと考えている。
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