スポンサーシップは、広告と並び、企業にとって、重要なプロモーション活動であるが、広告に比べて消費者へのメッセージが間接的である上、明確でない。さらに、近年スポンサー市場の拡大とともに、スポンサー料が高騰しているため、コストに見合った効果があるのかどうかを測定することが、より重要となっている。本研究の目的は、スポーツ・スポンサーシップが、スポンサー企業やライバル企業の企業価値にどのような影響を与えるのかを明らかにすることにある。 2021年度は、スポーツ・スポンサーシップが、スポンサー企業とライバル企業の株価に与える影響について、日米比較を行った研究が、査読付き学術雑誌(Journal of Advertising Research)に受理された。この研究は、1999~2010年のデータに基づき、スポンサー契約の公表が、日米両国のスポンサー企業の株価と正の相関関係がある反面、ライバル企業について、対照的な結果が生じることを示した。 具体的には、ライバル企業については、日本では負の相関関係が示されたのに対し、米国では正の相関関係が得られた。この違いについて、先行研究で示唆された2つの仮説を検討した。しかし、ライバル企業のスポンサー経験や、産業の相違が影響するという分析結果は得られなかった。このため、結論として、スポーツ市場の大きさの違いや、アンブッシュ・マーケティング(ambush marketing)の有無の違いが、対照的な結果につながったのではないかとまとめている。 また、修士2年生とともに、ForbesのThe World’s Highest-Paid Athletes 2020に掲載されたスポーツ選手8名について、2016年から2021年に開催された369のイベントで、優勝がスポンサー企業の株価に与える影響を推定した。その結果、コロナ禍発生前後で対照的な結果が得られた。
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